Hilary Hahn and Hauschka - Draw a Map Dir. Eric Epstein
人間の知覚(視覚、嗅覚、触覚)による体験を、他者に移植することを試みようとするプロット。Hilary Hahn と Hauschkaのプリペアドピアノとストリングスが絡み合った芳醇な楽曲と、知覚による体験の移植というモチーフとの相性が素晴らしい。映像の前半までどういう時代設定なのか一見分かりにくいのも空想科学的世界観にも見えてるのが興味をそそられる。特に冒頭に出てくる知覚を波形のように可視化したデバイスの造形は、何とも魅力的。それ故に、被験者をロケバスみたいな安っぽい車で連れてったり、また同じく被験者が付けているマスクやヘッドフォンも、どこかチープに見えたりと小道具にまで気を使ってもらいたかった。
Custard Dir. peter millard
日本でも『変態アニメーションナイト』でピーター・ミラードの作品を知った方も多いはず。今年の春頃にvimeoで偶然見かけたんだけど、どう作画してるの想像つかない異様なメタモルフォーゼと、脳の奥の奥にまで強烈に突き抜ける効果音。『なぜこのような作品を作ったのか』と考えてしまう。もし時間と空間を歪んだ状態があるとしたら、ピーターの描くアニメーションのような感じになるんじゃないだろうか。。あと登場人物がほとんど裸なのが気になる。
という感じ。振り返ってみるとネットで見た映像と上映会で見た作品が多かったですね。あとリストにピックアップしなかったけど、WOWの柴田さんが作った『SyncBody』の制作プロセスが音同期を全部コンピューターが自動でやってたりと、制作過程が興味深かったり、水江さんの『MODERN No.2』のラリー・キューバが現代に甦ったかのような劇アツ幾何学アニメーション、大島智子がディレクターで制作した泉まくらのMV『balloon』のもつ生々しさ、初音ミクを使った音楽のMV『tell you world』は、自分の中でのボーカロイドのもつ抵抗感をぬぐい去ってくれた強度の高い楽曲と映像の融合だったし、『ヱヴァQ』もかなり衝撃的でした。特にQに関しては多分今年最後に見た映画になるんだろうけど、序破急の『急』にあたるにふさわしい急展開ぶりに、ちょっと追いつけない要素は強かったり、映像のディテールが気になる箇所はありつつも、『劇場で何度も見たい』と思わせる完成度には頭が下がります。あと、今回は楽曲の完成度の異常な高さにはビックリ!!!多分年明けにもう一度見るし、サントラも多分買います。
ロシアで開催されるKyiv International Short Film Festivalのプログラム”100 films in 100 minutes”にて僕がディレクションしたHIFANAのMV『Damn What Ringtone』が上映されます。はじめこのプログラムのお誘いを受けたときは、よくこんなに映像見つけたな、、と関心してしまいました。
TOKYO ANIMA!は毎年国立新美術館のホールで行われているので、映画館のような上映に最適とは言い切れない環境ですが、これだけ多様化された短編アニメーションを一同に見ることが出来て、尚かつフリーのイベントだけあって、普段商業アニメーションしか慣れ親しんでない人にとって、色んな意味でショックの大きいイベントだったんじゃないかな、と参加者の一人として感じています。
Stefan Nadelman制作による、Lost Lander "Wonderful World"のMV。先ほどのモーショングラフィックスは公共性の高いデザインでしたが、こちらは生命の進化を連想させるような映像の構成とホイットニー兄弟の作品を彷彿させるような、アナログCGのような風合いが観ていて気持ち良いですね。
こちらはちょっと変わり種。
BENJAMIN DUCROZ監督による作品。3DCGで作られた映像を一度、紙に出力してから再度画像を読み込んでアニメーションにしてます。紙に出力することで、裂け目を入れたりシワを入れたり、さらにインクのドリッピングを被せるなど、アナログとデジタルを上手く融合させたアブストラクトなモーショングラフィックスと言えます。このようなイメージを紙に出力したものを再度コマドリで映像にする作品といえば伊藤高志の代表作『Spacy』を思い出します。
音楽を動きで表した表現はアニメーション以外にも人間の身体表現=ダンスでも垣間みれます。フランスの映画監督ミシェル・ゴンドリーがディレクターをつとめたDaft PunkのMV『Around The World』。当時のダンスミュージックのMVがカメラワークとダンサーの顔の表情だけで表現することに嫌気がさし、感情表現を徹底的に排除し、音の動きをダンスで表現した傑作。ゴンドリーが若い頃に恋人と観に行ったバレイコンサートで、ダンサーが"動き"だけで物語を表現出来ていることに感動したことが、このMVを作るキッカケになったらしいです。ただ、ゴンドリーが他に制作したMVを見るとノーマン・マクラレンをアプローチのビデオを作っているので、確実に今回ご紹介してる文脈の作家達の影響は受けていると考えられます。