2012年12月18日火曜日

【レポート】今年の映像作品を振り返る

ご無沙汰してます。
2012年もあと2週間ほどになりました。
blogを更新してない間にもREPUBLICやら学生CGやらライブ映像の制作で色々忙しかったのですが、ちょっと時間が出来たので今年見た映像作品を振り返って、印象的だったものをピックアップしようと思います。というのも、改めて映像作品とかMVとかって、一年間だけでもかなりの量が生産されつつも、ボーっとしてると好きだったものも新しい刺激を求めて自分のなかで消費してしまいそうになる。それがちょっと怖いと思ったので、その年に興味深かったものを自分で一度整理してアーカイブしたいと強く思いました。最初、候補に上げてた段階では15作品ぐらいあったんですが、特に自分が推したい作品を厳選して以下の通りになりました。



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田我流 - 『やべ〜勢いですげー盛り上がる』
dir. スタジオ石(MMM)
今年見たビデオを振り返る際に、優劣は付けないが一番最初に紹介したいと思ったのがコレ。理由は僕が2012年で多分一番リピート再生したMVだからだ。下手したら身内ネタで終わってしまいそうな企画を、膨大なカット量とテンポの良いエディット、ちょいちょい効果的に挟んだ特殊効果など、確かな技術を持ったうえでギャグに走るところが好感が持てる。何より良いと思ったのが、このビデオのディレクターが田我流と共に歌ったstillichimiyaに所属してるメンバーで作られたことが、ミュージシャンを取り巻く環境の中でも完成度の高いプロモーションが作れることが、とても魅力的に感じたし、『そういう時代なんだなー』、というのが汲み取れる良いMVだと思った。



hello world と パフォーマンス映像
Dir. 勅使河原 一雅
マクラーレンのダイレクトペイントを彷彿させる有機的な表情をもったアブストラクトだが、これがジェネレイティブな映像であり、すべてリアルタイムで生成されることでピアニストとのライブパフォーマンスと見事に融合してる。勅使河原さんの作品やパフォーマンスは今年はVJやインスタレーションなど色んな形で見る機会があったけど、実際にスクリーニングされた状態で見ると、まるで目蓋を閉じて網膜の内側で音のイメージを描いてるかのようなだった。暗闇の中で描かれる色彩と運動は、アブストラクトシネマをアップデートさせる事に成功してると言えると、見ていて痛感した作品。




Hilary Hahn and Hauschka  - Draw a Map
Dir. Eric Epstein
人間の知覚(視覚、嗅覚、触覚)による体験を、他者に移植することを試みようとするプロット。Hilary Hahn と Hauschkaのプリペアドピアノとストリングスが絡み合った芳醇な楽曲と、知覚による体験の移植というモチーフとの相性が素晴らしい。映像の前半までどういう時代設定なのか一見分かりにくいのも空想科学的世界観にも見えてるのが興味をそそられる。特に冒頭に出てくる知覚を波形のように可視化したデバイスの造形は、何とも魅力的。それ故に、被験者をロケバスみたいな安っぽい車で連れてったり、また同じく被験者が付けているマスクやヘッドフォンも、どこかチープに見えたりと小道具にまで気を使ってもらいたかった。




QQQ
Dir. そんよんそん
今年の三月に馬車道の芸大校舎で行われたアニメーション専攻の修了展で初めて拝見したんだけど、抽象アニメーションなのにも関わらず、作者の作品世界を構築するためのルール作りがまったく読めない複雑(難解?)な世界観(+異様に厚塗りされたパステルによる作画のインパクト)に圧倒された。作者のそんよんそん氏いわく、『新しい生命を作りたかった』という言葉が印象的で、確かに抽象アニメーションにある"既存の生命のデザインを抽象化する"ようなデザインがされてない、まさに『新しい生命』という言葉に説得力を持たせてるように思える。ただ思うのが、ライヒのミニマルミュージックのような既視感の強い音楽と、映像の強烈な画面作りと作者独自の文法の温度差が気になってしまった。。






休憩3D(アニメーション・ショー)
Dir. Don Hertzfeldt
2010年の『アニメーションズ・フェスティバル』で初めてドン・ハーツフェルトというアメリカの作家の存在を知ったが、今年開催されたハーツフェルトの作品でプログラムが組まれた上映で、『休憩3D』という作品を知る。込み入ったことは今年リリースされるDVDを買って自分の目で確かめてもらいたいんだけど、リンクを張った『休憩3D』は過去に制作された三部作(合計で40分近くある大作)の合間に流された、いわば『箸休め』のような作品なんだけど、3D映画をシニカルにレクチャーし、暴力性のある描写がとにかくバカバカしくて、イメージフォーラムで初めて見たときは爆笑してしまった。youtubeだと分かりにくいが、1コマずつフィルムで撮影されてて、見て行くうちに情報量がどんどんリッチに補完されてく感じが気持ちいい作品。






Custard
Dir. peter millard
日本でも『変態アニメーションナイト』でピーター・ミラードの作品を知った方も多いはず。今年の春頃にvimeoで偶然見かけたんだけど、どう作画してるの想像つかない異様なメタモルフォーゼと、脳の奥の奥にまで強烈に突き抜ける効果音。『なぜこのような作品を作ったのか』と考えてしまう。もし時間と空間を歪んだ状態があるとしたら、ピーターの描くアニメーションのような感じになるんじゃないだろうか。。あと登場人物がほとんど裸なのが気になる。





ハウス
Dir. デイヴィッド・ブオブ 
『グレートラビットと世界のアニメーション傑作集』で初めて拝見。
トレーラーがQuickTimeというのがヒジョーに残念なのだが、、、箱庭的構造の世界が、重力の法則を無視して展開して主人公の娘が祖母の面倒を見るが、叔母と母親が邪魔をする、、、という結構ヤバいストーリー。上にも書いたけど、箱庭的な妙に圧迫感のある不気味な世界観と、叔母と母親に邪魔されながらも必死に祖母の面倒をみるために四苦八苦する姿はとてもキュート。何かしらの形で日本で再び上映されないかなー。






X - KXFS Canal Commission
Dir. Max Hattler
ラストは、僕が大好きな映像作家、マックス・ハットラーによるコミッション作品。
扇子状に広がる噴水に昔のビデオゲームにあったシューティングゲームを彷彿させる抽象アニメーションを投影されている。まるで空間に光を直接描いたように見える、、というより光が水という物体に憑依してモノとしての存在を得た姿はかなり神々しく見えて、グっとくるものがある。ちなみにこの映像で作られたアニメーション部分はmatt abbissによるもの。



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という感じ。振り返ってみるとネットで見た映像と上映会で見た作品が多かったですね。あとリストにピックアップしなかったけど、WOWの柴田さんが作った『SyncBody』の制作プロセスが音同期を全部コンピューターが自動でやってたりと、制作過程が興味深かったり、水江さんの『MODERN No.2』のラリー・キューバが現代に甦ったかのような劇アツ幾何学アニメーション、大島智子がディレクターで制作した泉まくらのMV『balloon』のもつ生々しさ、初音ミクを使った音楽のMV『tell you world』は、自分の中でのボーカロイドのもつ抵抗感をぬぐい去ってくれた強度の高い楽曲と映像の融合だったし、『ヱヴァQ』もかなり衝撃的でした。特にQに関しては多分今年最後に見た映画になるんだろうけど、序破急の『急』にあたるにふさわしい急展開ぶりに、ちょっと追いつけない要素は強かったり、映像のディテールが気になる箇所はありつつも、『劇場で何度も見たい』と思わせる完成度には頭が下がります。あと、今回は楽曲の完成度の異常な高さにはビックリ!!!多分年明けにもう一度見るし、サントラも多分買います。


リストに挙げてみると、自分は映像を取り巻くテクノロジーの進歩とかにあまり興味がないんだなぁ、というのが一番印象的でした。今年も抽象表現やアニメーションに強い関心がある一年で終わってしまいましたが、もし来年の今頃に一年間振り返って変化があるかも。。

2012年11月19日月曜日

【ご報告】第14回DigiCon6


ってなわけで11/16はTBS主催の映像コンテスト"DigiCon6"の授賞式に行ってきました。
"Your Thorn"が最終ノミネートに残ったという通知を頂いて式に呼ばれたんですが、メールの内容的に賞を保証した文体ではなかったので、忙しい時期に若干リスキーだな。。と思いつつ、会場だった丸ビルホールへ。


シネコン並のスペース。テレビ局主催らしく、しっかりした機材と生放送並みのオンタイムを刻んだ司会進行に、プロの仕事を垣間みる。。。


ちなみにDigiCon6はアジア10カ国から作品を応募していて、その数はのべ1600作品以上。その中から各国最優秀1作品をセレクトしてから、そのなかで大賞を決めるコンテストのようです。写真は日本を除く各国の最優秀作品の作家達。




んでもって、Your Thornも無事(?)に奨励賞としてセレクトしていただけて、ホっと胸をなで下ろす。。。

賞金こそ出なかったですが、、奨励賞が授賞式の中で『作家性の高い作品に送られる賞』という選考基準と、そのうえでYour Thornを推薦していただけたのが、ポリゴンピクチャーの塩田さんだったのが嬉しかったですね。授賞式後のパーティーで、他の審査員の方から塩田さんが『絶対入賞作品の中に入れたい』とゴリ押しして頂けたみたいなので、塩田さんが居なければ、この賞もあり得なかったなー、と思っています。思えば学生CGでも審査の中で原田さんが推薦してくれたりと、CG表現に精通してないと、Your Thornのニッチな方法論に中々気付いてくれないというのもあるのかも。

TV局のコンテストだけに、受賞作品を見る感じだと『純粋な芸術性を評価するというより、オーディエンスを意識して、その中でクオリティの高い作品を選別する』という印象を受けました。その中で"奨励賞"を頂けてマスメディアで紹介されるのは、とても大きな収穫だったと思います。

ちなみに、授賞式と受賞作品の放送はクリスマスイヴの深夜からオンエアされるとの事!
詳細が分かりましたら、また改めてご報告します。。。

2012年11月7日水曜日

【VJ出演】REPUBLIC vol.10 『THE FINAL』転校生×大橋史(metromoon)出演!


ってなわけで来る12/1@渋谷WOMBで行われるDIY型オーディオビジュアルイベントである『REPUBLIC』にVJとして出演させて頂きます!名義は僕の名前がフィーチャーされてますが、映像演出のコンセプトメイキングと骨組みを僕が担当し、それに肉付けしキレイな衣装やメイクをmetromoonのメンバー一緒にしていくので、渋谷WWWで行われたcokiyuさんのライブを見逃した方は是非!!!


共演は水本夏絵さんのソロプロジェクト『転校生』です。
透き通るような瑞々しさ溢れるサウンドと、狂気を垣間みる詞世界をmetromoonのメンバーによって水本さんの内的宇宙を創造します。来て絶対後悔させません。冬の熱い一夜になること間違いなし!!!

父ちゃん母ちゃん誘ってREPUBLIC!!!
気になるあの子を誘ってREPUBLIC!!!



REPUBLIC VOL.10


2012/12/01(Sat)
REPUBLIC VOL.10~THE FAINAL~@WOMB
13:30-21:30(予定)
当日¥4,500
前売り¥3,500
(e+/ローソンチケット Lコード:78889)
※ドリンク代別途

【SOUND ACT× VJ】

HARADA Daizaburo
-Audio Visual Set-

田我流 × スタジオ石×SNEEK PIXX

ATATA ×伊藤ガビン+hysysk+matt fargo
aus × TAKCOM
ハイスイノナサ × 大西景太
DUB-Russell × (yusukeshibata+daiheishibata)
転校生 × 大橋史(metromoon)
泉まくら × 大島智子
Inner Science × Takuma Nakata
metome × 吉田恭之
Himuro Yoshiteru × maxilla

【SOUND ACT】
sasakure.UK
Fragment
TeddyLoid
DJ WILDPARTY
okadada
Yaporigami
SUNNOVA
Free Babyronia
MASTERLINK
hiroyuki arakawa
neonao(futago traxx)
M'OSAWA
SHIGAMIKI
MAYU

【VJ】
exonemo(VideoBomber set)
SUPERPOSITION
yasudatakahiro
leno
らくださん
Shinji Inamoto
NOISE ELEMENT
VideoNiks
blok m
アサヒ
VJ PLUM


公式サイト
http://republic.jpn.org/



!!!!!!これを見ろ!!!!!!!

VJ陣も(毎度のことですが)かなり豪華ですね。メディアアート界で著名なエキソニモやチョーリスペクトしてる大西景太さんに同じ学科の先輩にあたる斎藤渉さん率いるVJチーム、柴田兄弟など強者揃い。まるで天下一武道会のよう!





コラボ陣も田我流にaus、ダブラセルや泉まくらと著名なミュージシャ、、

あれ?









HARADA Daizaburo -Audio Visual Set-









REPUBLICにラスボスHARADA Daizaburo大魔神が降臨ですね。
ヤバい

2012年11月6日火曜日

【ご報告】CGアニメコンテストに『Your Thorn』入選

ってなわけで10/24に京都で行われたDoGA主催の『CGアニメコンテスト』の授賞式に行ってきました。昨年作ったcokiyuさんのMV『Your Thorn』が入選という形で賞を頂いたのです(ありがたし)


10年近く振りの新幹線。東京から京都まで2時間半。


 会場の京都コンピューター学院の校舎。
 入り口。

 同日、CGアニカップという台湾とEUのアニメーション作品とCGアニメコンテストの入選作品をピックアップして戦わせるという親善イベント。
スクリーンがデカイ(んだけど、解像度が低くて画面のキレが悪いのがとても残念...)


司会は主催であるDoGAの鎌田さん。

 600人収容できる巨大ホール。当日は半分近く埋まってました。
 表彰式。まるで炊き出しの行列。。。


 表彰式の後は会場裏のスペースで交流会。はじめて『赤ずきんと健康』で有名な井上さんやよく見てるニュースサイトのライターの方ともお話できました。

表彰式が終わってエモい空気感でてた。

『赤ずきんと健康』の作者である井上涼監督。ドラッグクイーン。

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授賞式に行ってみて、ネットを媒体とした鑑賞よりも、作品を見てもらう緊張感やリアクションの解像度の高さに改めて驚かされるし、台湾の作家さんがYour Thornを絶賛してくれたのがとても嬉しかったですね。

それと、CGアニカップでYour Thornが狩りだれた際に『ニャッキ』の伊藤有壱さんが作品を見てくれて、「CGを現実の再現のためじゃなく、レンズを使わずに光を描くための素材として扱ってる」というCGの方法論に共感してくれたのがスゴく嬉しかったし、『状況に負けずに、その方法論を貫いてほしい』と言われて背中押されたのが、その日のハイライトだったと思います。


学生CGやDOTMOVとは毛色の異なる文脈で少し戸惑いましたが、授賞式にいった事で少し視野が広がった実感を得ました。



2012年11月2日金曜日

【ご報告】DOTMOV FES'2012

ってなわけでオンラインマガジンSHIFT主催の映像コンテスト『DOTMOV』に修了制作『CHANNELER』が優秀作品として選出されました!!!サイトでは審査員のコメント付きなんですが、学生CGコンテストとは違った見方がされてて面白いです。

選出された作品は以下のスケジュールで上映されるようですので、お近くにお住まいの方は是非遊びに来てください〜〜〜!!!

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上映会場・期間

11月01日〜11月03日 札幌 ATTIC
11月01日〜12月25日 札幌 CAI02
会期調整中1     仙台 東北大学大学院 book+cafe BOOOK
11月16日〜11月28日 東京 TOKYO CULTUART by BEAMS
12月01日〜12月28日 静岡 CCC 静岡市クリエーター支援センター
11月07日〜01月29日 大阪 阪急百貨店うめだ本店
11月28日〜12月12日 大阪 ディグミーアウトART&DINER
11月01日〜11月11日 京都 カフェアンデパンダン
11月25日〜11月27日 福岡 konya-gallery
11月12日〜11月24日 ロンドン ICNギャラリー・カフェ
11月10日〜12月31日 バリ セレブレイティング・オープンネス
12月01日       ストックホルム レベニューS:t Eriksgatan 79
11月03日〜12月12日 ニューヨーク ザッカ
12月01日〜01月31日 ロサンゼルス ノルヴァータレン・ギャラリー
会期調整中                      メルボルン フェデレーション・スクエア
会期調整中                      シドニー 
会期調整中                      シンガポール ポスト・ミュージアム
会期調整中                      リオデジャネイロ TechArtLab
会期調整中                      リオデジャネイロ マルチメディア・フェスティバル
11月13日                         クアラルンプール デザイン・ウィークエンド2012


2012年10月12日金曜日

【告知】深宇宙パーティーに出演します


ってなわけで10/13は渋谷WWW(呼び方不明)でわが母校である多摩美の情報デザイン学科が主催するイベントに出演します。共演は多摩美の准教授であり音楽家のヲノサトル大先生です!!!緊張!!!!!!!


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学科設立10周年を記念して開催された「iddX ~宇宙パーティー~」から、早4年。2012年度より「メディア芸術コース」と名称変更し、メディア芸術の次世代を切り拓くコースとして、これまで以上に挑戦していきます。この名称変更を記念して、いっそう豪華なラインナップで「改名記念(お披露目)パーティー」を開催します。出演者はすべて、メディア芸術コースの教員、OB、在校生です。至極のライブ・パフォーマンスが誘う「深宇宙」へ。搭乗間近です!

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iddX2 ~深宇宙パーティー~
場所:渋谷WWW
日時:2012年10月13日(土)
開場:15:00
開演:15:15
終了:22:00

公式サイト>
info:多摩美術大学 情報デザイン学科メディア芸術コース

Artists
Live---
原田大三郎、山川冬樹、Typingmonkeys、K2(INOUE Keisuke + SATO Kimitoshi)、Macro Mantra Matrix、zolgelpro、TELESCOPE

DJ---
PLEASURE CHANNEL (a.k.a. Satoru WONO)(+VJ: Takashi Ohashi)、Boys Be kko、THE CLAUDECKS、Sato Kimitoshi

【上映】Campus Genius for SKY GATE VISION


もう終わってしまいましたが、、、成田国際空港出発ロビーに新しく設けられた大型有機ELパノラマビジョンで「学生CGコンテスト」の作品上映がありました。生で見たかった。。。

DEPARTURE Project vol.01
Campus Genius for SKY GATE VISION
期間: 9月7日(金)~13日(木)
場所: SKY GATE VISION
成田国際空港【第1旅客ターミナルビル】南ウィング4階
出発ロビー Gゾーン付近ウェイティングエリア

[コラム] DEPARTURE Project – 成田国際空港で若手作家を紹介
http://dep-art-ure.jp/?p=5977

【上映】『Your Thorn』が阪急うめだ本店で上映!


学生CGコンテストの受賞作品として『Your Thorn』が10月25日にオープンする阪急うめだ本店で上映することになりました。

9階から12階の4層吹抜け、高さ16mの大空間「祝祭広場」に設けられた巨大なスクリーン(6240mm×6480mm)で毎時2作品づつが順番に上映されます。上映される作品は、第13回から17回までの受賞作品の中から選ばれた17作品です。

学生CGコンテスト特別プログラム

会期:10月25日(木)〜

会場:阪急うめだ本店9F祝祭広場アートビジョン


詳細は学生CGコンテストのFBページへ!→リンク

【上映】『Your Thorn』がanim’est@ルーマニアで上映!


ルーマニアのブカレストでアニメーション映画祭「anim’est 」にて、cokiyuさんのMV『Your Thorn』が上映されました!(過去形!)JURY PROGRAMMEというアニメーション研究家の土居伸彰さんキュレーションによる特別プログラムの中にYour Thornが組み込まれました。土居さんのツイートで今回のプログラム内容の意図が解説されてます!




【上映】Damn What Ringtoneが100 films in 100 minutes@ロシアで上映!



ロシアで開催されるKyiv International Short Film Festivalのプログラム”100 films in 100 minutes”にて僕がディレクションしたHIFANAのMV『Damn What Ringtone』が上映されます。はじめこのプログラムのお誘いを受けたときは、よくこんなに映像見つけたな、、と関心してしまいました。

2012年10月10日水曜日

【ご報告】TOKYO ANIMA2012無事終了【満員御礼】

そんなこんなで、10/7~8の二日間行われたTOKYO ANIMA!2012-AUTUMNが無事終了しましたー。二日間で来場者はのべ1300人もの方に足を運んで頂き本当に嬉しいです!


TOKYO ANIMA!は毎年国立新美術館のホールで行われているので、映画館のような上映に最適とは言い切れない環境ですが、これだけ多様化された短編アニメーションを一同に見ることが出来て、尚かつフリーのイベントだけあって、普段商業アニメーションしか慣れ親しんでない人にとって、色んな意味でショックの大きいイベントだったんじゃないかな、と参加者の一人として感じています。

会場の入り口にあった看板。webサイトとは違って、ブルーを基調としたデザイン。

これが新美術館の上映会場。300人以上が入れるハコになってます。音響は低音が弱いんだけど、プロジェクターがかなり鮮明。データ上映なので映像がとにかくキレイで興奮した。イスが会議で使われるような持ち運び易い感じのタイプなので、90分座ってると、ちょっと辛くなってくるんだけど、ハコ自体がかなり広いので、300人入っても空間がゆったりしていて、落ち着いて観れるのは嬉しい。


プログラムが一つ終わるごとにお客さんが一気に入れ替わる。客層も、雰囲気が似てる人がぜんぜんなくて、プログラムの作品群のようにかなり多種多様なお客さんが集まってくれました。


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今回、短編アニメーションというジャンルの上映会に参加して、改めてCHANNELERの作品の見え方が変わってきました。webに配信することを前提にしたスピード感が、いろんな作品に囲まれて上映という形式になったとき、体感する作品の速度がBPM以上にアップテンポに感じたり、巨大なスクリーンに上映されることで、フォントのディテールがより鮮明に見えて、webで流すよりもAAの表情が強烈に立ち上がってくる瞬間は、とても興味深い発見だったと思います。

あと、個人的には水尻自子さんの『布団』との出会いは衝撃的でした。
自身のフェティッシュを探求するという、潔いテーマを長い時間をかけて突き詰めることで得ることができる強度の高い作家性。まるで抜きどころだらけのAVを見てるかのような勃起感の高いアニメーション。自分が今後作品を作り続けるとき、『同じテーマを探求する』ことの重要性を痛感させてくれました。


いま作ってる新作が完成させたら、今後どんな作品を作るべきかちょっと見えてきたような気がします。



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それと、改めて今回TOKYO ANIMAに誘って頂いた水江さん、運営を主導した藤田さん、本当にありがとうございました!機会があればまたTOKYO ANIMAに誘ってください&応援しています!!!


2012年10月5日金曜日

【VJ】cokiyu × metromoon at ShibuyaWWW 2012.09.25




at Shibuya WWW / 2012.09.25
cokiyu × metromoon

Animation/VFX: Takashi Ohashi
Movie/Still: Wataru Yamamoto
Switching: PLUM(Saori Shiroshita)
Painting: Akiko Nakayama

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set list
m1. Intro
m2. With My Umbrella
m3. Gdb
m4. Drag The Beast
m5. Mirror Flake
m6. Your Thorn
m7. See The Sun

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Archive crew
Photo: Wataru Yamamoto
Movie: Koya Yokoyama, Reona Takada
Edit: Takashi Ohashi

ってなわけで、先日行われた渋谷WWW(呼び方不明)でのcokiyu × metromoonのライブ映像がリリースされました。前回はWOMBのラウンジ(REPUBLIC vol.9)を360度プロジェクションされたVJで、パースや立体感、ビューポイントのある素材よりも、二次元的で模様やテクスチャーっぽいVJ素材を作って、異なるプロジェクターの出力が画面の端で切れてる部分が繋がる様に見せるアプローチを提案。ラウンジの壁がビューポイントのない装飾的な空間になり、まるで尾形光琳の絵画のような空間になることを狙いました(懐かしい。。。)


上の写真を見て頂ければなんとなく分かると思うのですが、今回は渋谷WWWのスクリーンが一つだけで、なおかつめちゃくちゃデカイということもあり、各メンバーが得意としてる作風をヤリきった素材を作って、ディテールで見せていく方向性で作り進めることに。改めてメンバーの紹介をしていくとCG/VFXが大橋史、実写素材が山本渉、オペレーションがPLUM、、とココまでは過去のVJでも共演したメンバーですが、今回はペインターとして中山晃子を加えた新体制をとりました。



上の動画は夏にメンバーと東京造形大の校舎をお借りして行ったテスト風景。中山をメンバーに加えた経緯は、REPUBLICでのVJをしたあとに、今後素材のクオリティとスイッチングの精度を上げていくと、ライブセットに対してコンセプチュアルな演出を取ったり、ビデオの素材で作家性を見いだすこと以外で他のプレイヤーと差別化を計りにくくなりすぐに行き詰まる予感がしました。そこでより即興性や偶然性のあることを取り入れたいと思う様になったのですが、流行りのリアルタイムによるオーディオ・ビジュアルに移行しても、すでに長い時間をかけてAfterEffectsを駆使したCG表現に拘ってきた自分の作風をVJのときだけ変えてしまうのも問題の解決の仕方として微妙だったと思います。出来ることならモーショングラフィックス界隈やクラブ界隈ではなく、文脈の異なるメンバーが欲しい。素朴で、すでに認知されたツールだけど誰にもマネ出来ないことをする人を呼びたい。。という思惑があったからです。


新しく個性の異なるメンバーを加えることで発生する問題は統一感だったと思います。VACANTでのリリパもREPUBLICのVJでも、8割は僕の手が介入したVJ素材なので、統一感という問題に直面することはありませんでした。しかし今回はCG、エフェクト、実写、ペイントというまったく異なるマテリアルを極力融合させずに統一感を出したかったので、水や植物、微生物といった関連性のある固有名詞が思い浮かぶ素材で統一しつつ、各々の個性をオムニバスに披露する自己紹介代わりのような演出になりました。融合させたくなかった理由ですが、metromoonの将来的な方向性のビジョンはWWWの演出とは真逆の『個性の融合』ではありますが、今回のパフォーマンスで、そのビジョンに到達する為には段階を踏む必要があると思いました。まず、改めて各メンバーの作家性を全面に出し、問題を見つけ、次の課題を設定する必要があったのが、その理由になります。


将来的には渋谷WWWのようなオムニバスな演出ではなく、メンバーの個性を融合させる合体技のようなパフォーマンスに移行していくと思います。デジモンのような段階的にステップアップするように、一段ずつ確実に成長していけるようになれたらな〜、なんて思いながら既に出演が決まった12月の某イベントに向けて気持ちを引き締めたいと思う次第です。次はcokiyuさん以外(DJを除く)のミュージシャンに初めてVJを付けるので、いろいろ楽しみっす。



2012年9月27日木曜日

【レポート】モーショングラフィックスの定義(2) - 抽象アニメーション編

前回でのエントリーではタイトルバックに絞ってモーショングラフィックスの歴史とか定義について話をしてみました。(改めて振り返ると)そもそも、何故こんな話をしているのかを振り返ると、以前CBC-NETというカルチャー誌や映像ライターの林ナガコさんとモーショングラフィックスについてトークをする機会があったのがキッカケです。モーショングラフィックスという便利な言葉のおかげで、前回ご紹介したような『タイトルバック』や『フライングロゴ』、After EffectsやC4Dなどのモーションデザインツールを駆使した幾何学的なアブストラクトやプログラミング言語を駆使したジェネレイティブな映像まで、いろんな表現に良い感じに『モーショングラフィックス』という言葉をはめ込んできました。ただ、イマイチ定義がよく分からないうえに表現が多様化してきていて結果的に都合の良い言葉になってしまったように思えきたので、今一度、現代のモーショングラフィックスと、それに影響を与えた可能性のある過去の様々な文脈の表現を繋げてみて、モーショングラフィックスの定義について考えてみたいな、という僕の個人的な思いで記事を書いてます。(普段このblogは僕のデザイナーや作家活動を告知したり活動内容を報告するblogになってます)

今回は音楽と映像のシンクロが気持ち良いアブストラクト(抽象)なモーショングラフィックスと1900年代から始まった抽象アニメーションとの関係に絞ってお話しします。


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アブストラクトなモーショングラフィックス


vimeoでMG作品を公開したり、閲覧してる方は知らない人はいないはず。細金卓矢氏のVanising point。もともとビーマニなどに代表される音ゲーで使われるBGA(バックグラウンドアニメーション)のために制作されたらしく、画面の規格も1:1と珍しいですね。2Dのモーションから3DCGへマッピング、手ぶれのようなカメラワーク、フィルムで撮ったかのような画面の四隅に出来たボケ等、よく見ると様々な技法を取り入れてあります。なによりこのビデオの特徴は音楽とのシンクロの気持ちよさ。公共的でグラフィカルなデザインが、動きと音が与えられることによって質感が表現出来ているのが面白いです。



Stefan Nadelman制作による、Lost Lander "Wonderful World"のMV。先ほどのモーショングラフィックスは公共性の高いデザインでしたが、こちらは生命の進化を連想させるような映像の構成とホイットニー兄弟の作品を彷彿させるような、アナログCGのような風合いが観ていて気持ち良いですね。






こちらはちょっと変わり種。
BENJAMIN DUCROZ監督による作品。3DCGで作られた映像を一度、紙に出力してから再度画像を読み込んでアニメーションにしてます。紙に出力することで、裂け目を入れたりシワを入れたり、さらにインクのドリッピングを被せるなど、アナログとデジタルを上手く融合させたアブストラクトなモーショングラフィックスと言えます。このようなイメージを紙に出力したものを再度コマドリで映像にする作品といえば伊藤高志の代表作『Spacy』を思い出します。



lexander Rutterford - Gantz Graf
オウテカのノイジーなテクノミュージックの微細な表情をしつこく3DCGでビジュアライズしたMV。上記のビデオは比較的リミテッドな表現に対して、こちらは音のビジュアライズに対して、CGのアニメーションの情報量がかなり詰め込まれてるのが分かると思います。

音同期をテーマにしたモーショングラフィックス、、特にAfter Effects(以下AE)や3DCGを駆使して作られたビデオは00年代からかなりの数で増えてきたと言われています。おそらくadobeのAEがリリースされた1990年代以降、特に制作環境のコスト低下とyoutubeやvimeoが普及し始めた00年代半ばから、ネットを通じて作り手同士がMGの作品を発表し、刺激し合って、結果そのシーンの盛り上がりが加速していったと僕個人は感じていています。



そんなアブストラクトな映像は2D/3D問わず様々なアプローチで作られてますが、その系譜を探ってみようと思います。







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抽象絵画と映像


そもそも抽象的な視覚表現はどのように発生し、そして展開し派生していったのでしょうか。さかのぼること1910年代、パウル・クレーやワシリー・カンディンスキーといった画家達がキュビズムや印象派のような「対象物がある/具象的」表現から、「非・対象/抽象」を描いた抽象絵画というジャンルが誕生した時代でした。特にパウル・クレーはドイツのデザイン学校「バウハウス」で絵画表現の理論化を推し進めた重要人物であり、音の画家という異名も存在します。それを裏付けるのが氏の講義記録や旅先でのメモを書籍化した「造形思考」で、フォルム(形態)やトーン(色調)の反復によるリズムやハーモニーの研究、音楽構造の可視化を試みたオブジェや図形楽譜のようなスケッチなどが記載されています。そして、クレーの有名な言葉で



「芸術の本質は、見えるものをそのまま再現するのではなく、見ようとするものを描くことである



とありますが、音という視覚で表せないものを色彩や形で具体化することは、まさに「見ようとするものを描くこと」と通じていると思われます。そう考えると、現在の音のビジュアライズをテーマにしたモーショングラフィックスが存在するのも、現代のデザイナーが密かにパウル・クレーの影響を受けていると考える事が出来ますね。





リュミエール兄弟 - リュミエール工場の出口
さらにエジソンのキネストロープの発明に触発され、1890年代にはリュミエール兄弟が、現実の世界を動画として記録と映写の複合機『シネマトグラフ』を使用して映画を作った時代と近かったこともあり、当時の画家達は次第に自分達が描いた抽象絵画を動かしたいという欲求にかられたのかもしれません。事実、下のリンクに挙げたオスカー・フィッシンガーは画家としてのバックボーンがあり、ハンス・リヒターは絵画の音楽家というコンセプトの抽象映像「リズム21」を制作しています。



1800年末〜1900年初頭という時代にあった


  • 抽象絵画の誕生
  • フィルムを使った映像(映画)が誕生した時代

という二つの出来事を踏まえたうえで抽象アニメーションの流れを確認してみましょう。



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抽象アニメーション/絶対映画の誕生


1900年代初頭、ダダイズムという前衛芸術運動の中で様々な作家達が非・対象の映画を制作してきたと言われています。そのなかで1920年代には、ハンス・リヒターが「絵画に時間を与える」ことに挑戦した作品「リズム21」を制作し、抽象的なサイレント映画を発表しました。この作品の特徴はセリフやドラマといった何かに演技させるといった文学や演劇のようなアプローチが一切ないという点であり、描かれてるものは幾何学図形が移動したり伸縮したりするだけ。いまでは、このようなドラマ性(モノ語る)のない映像の事をノンナラティブ映像と呼んだりもします。抽象絵画に動的要素を与えて抽象アニメーションというジャンルを誕生させた先駆け的な人物と言えるかもしれません。(あと当時はフィルムで映像を出力した事を想像すると、フィルムのコマの羅列に描かれた無数の幾何学図形の反復は、抽象絵画のようにも見えたかもしれませんね)


ちなみに、「リズム21」と東京近代美術館に常設されている「色のオーケストレーション」には関係性があるという記事がとても興味深いのでご紹介します。


ハンス・リヒター《色のオーケストレーション》




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音楽と映像のシンクロ



Oskar Fischinger - Study NO.7
1930年、音楽と抽象アニメーションのシンクロを初めて試みたオスカー・フィッシンガーの連作。フィッシンガーも抽象画家というバックボーンがあり、具象的なイメージでなく、音楽の持つムーブメントを表現しようとした抽象的なアニメーションを作ったのもうなづけます。エジソンの蓄音機の発明され、そして映画のフィルムにサウンドトラックが加わったことで、音が発せられた本来の原因(NO.7の場合は本来なら抽象映像ではなく、オーケストラが演奏するイメージが正しい映像になる)とは別のイメージを与えることが出来た当時の時代背景から考えると、かなり衝撃的な映像作品だったことが想像出来ます。フィッシンガーのstudyシリーズを見ると、オーケストラの演奏の動作を思わせる箇所がありますが、以前リズムシの成瀬ツバサ君が「すばらしい演奏をすると、その姿は自然と美しいダンスになる」って言葉を思い出して、それを考えると、ダンスとアニメーションって似てるんだな、と思ったり。

ちなみに、フィッシンガーの絵画作品は、以下のリンクでご覧になれます。制作年が抽象アニメーションを作っていた1930年代の後のものが多いですが、映像作品のためのイメージボードのようにも見えますね。

Oskar Fischinger – Paintings in Motion







George Cup制作による抽象アニメーション。こちらは1979年の作品。先ほどご紹介したリヒターと見た目やアニメーションの動く感じが似ていますね。こちらはフィッシンガー同様に音楽のムーブメントを可視化した抽象アニメーションになっています。





Beeple - Century Gothic
オスカー・フィッシンガーを彷彿させる黒バックに抽象的な図形の運動、、のように思えますが、よく見ると様々な文字や記号(タイポグラフィ)が音のイメージに合わせて動いてるMG。ちょっととぼけた感じのエレクトロとタイポグラフィの動きのギャップがユニークで面白い。



Daft Punk - Around The World
音楽を動きで表した表現はアニメーション以外にも人間の身体表現=ダンスでも垣間みれます。フランスの映画監督ミシェル・ゴンドリーがディレクターをつとめたDaft PunkのMV『Around The World』。当時のダンスミュージックのMVがカメラワークとダンサーの顔の表情だけで表現することに嫌気がさし、感情表現を徹底的に排除し、音の動きをダンスで表現した傑作。ゴンドリーが若い頃に恋人と観に行ったバレイコンサートで、ダンサーが"動き"だけで物語を表現出来ていることに感動したことが、このMVを作るキッカケになったらしいです。ただ、ゴンドリーが他に制作したMVを見るとノーマン・マクラレンをアプローチのビデオを作っているので、確実に今回ご紹介してる文脈の作家達の影響は受けていると考えられます。


X (by Max Hattler) - KXFS Canal Commission
映像作家マックス・ハットラーが監督したKXFSのコミッション作品。噴水に抽象アニメーションを映写することで、水の揺らいだ表情と物理的な空間で昔のアナログCGのようなルックが浮遊する画がとても新鮮に見えます。ちなみにマックス・ハットラーは他にも様々な手法による抽象映像を制作してるので、彼のvimeoアカウントを是非チェックしてみてください。



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カメラレスの世界



ノーマン・マクラーレン - 色彩幻想
映像がレンズを通した世界を再現することが出来るメディアから、フィルムに直接絵を描いてカメラレスな世界(パースペクティブが存在しない世界)を表現することを可能にした手法に拡張したのが『ダイレクトペイント』と呼ばれる技法。1900年代初頭からダダイズムの作家がこの手法で非・対象の映像を作ったと言われていますが、カナダのアニメーション作家であるノーマン・マクラレンは、そのダイレクトペイントを用いて、音楽と映像の調和を試みた『色彩幻想』という作品を作りました。普段、僕らが見ている世界は空間(パースペクティブと空気の層)が存在してることが空気があるのと同じことにように当たり前のことであり、映画のようなパラレルワールドの窓として機能してる映像の接し方が前提にある価値観を切り崩したと言える作品だと僕は解釈しています。面白いのが、このアニメーションはフィルムで作られているという点です。映像を見ると、筆後が縦に走る演出が垣間みられますが、フィルムのコマ(時間)を連ねる構造が縦である特徴が如実に現れているのが分かると思います。いまの映像はコマの概念は同じだとしても、それが縦や横という構造が存在しません。ツールによって表現の特徴が出易いという点では、AEやC4DといったCGツールと共通するところがあります。






Jan Dybala JD Video - Vrgb VHS Visual Music Composition n.002
同じ抽象映像ですが、手法をアナログCGに変えてご紹介。こちらはVHSビデオデッキにアナログフィードバック/ディレイエフェクトをかませてアナログなCG映像になっています。アニメーションという言葉よりもグリッジと呼んだ方が正しいかもしれません。具体的な制作プロセスが不明な作品ですが、おそらくVHSのビデオテープに入った映像と音声に上記のエフェクターをかませてると思われます。こちらも、レンズを通した世界ではなく、フィルムに直接描いて映写するような、映像メディアの特性を活かしてイメージを立ち上げていく事と共通しています。(もしかしたらVHSテープにはカメラで撮った映像を、アナログエフェクターで抽象的に加工した。。。かもしれません)

ところで、この映像作品を見ていると、なんか懐かしさを感じると思ったらマクラレンのSYNCHROMYを思い出しました。



SYNCHROMY
電子音のピッチの変化に合わせて幾何学図形の大きさが変化する、まるでオーディオ製品のゲインを表記する部分のようです。細かい面分割からシンプルな画面にカットが切り替わったりビビットな配色が、先ほどご紹介したVHSのグリッジ映像と何となく彷彿させるなと感じました。




水江未来 - A long day of timbre
細胞や立方体などのモチーフを扱った日本の抽象アニメーション作家である水江未来の作品。思い描いたイメージを一枚一枚描くアニメーションという手法でも、そのイメージがカメラレンズを通した世界であるアニメが圧倒的に多いですが、水江さんの作品はレンズ越しの世界ではなく、パースのない平面的でとてもグラフィカルなルックなのが一目で分かります。細胞の量感よりも、運動と画面を覆い尽くす色彩がまず目に飛び込んでくる作品です。


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まとめ


こうして、1920年代の抽象アニメーションでオスカー・フィッシンガーから発生した音と映像のシンクロに挑戦した映像は、ノーマン・マクラーレンの『カノン』によって実写のストップモーションを駆使して楽曲構造の可視化が行われ、1990年代になるとミシェル・ゴンドリーや辻川幸一郎によって『実写の映像素材を使用して、具象的なモチーフを使いながらも、モチーフの運動で音を表現する』アプローチにまでに洗練された。現在では冒頭で紹介したようなCGを使ったMにまで拡張を続けているのが分かります。


さて、ここで一度ここまで紹介した抽象アニメーションと現在のアブストラクトなモーショングラフィックスに共通する要素をまとめてみます。現在の音楽の可視化を試みたMGが先ほど例に挙げた抽象アニメーションの影響は受けていると考えられます。


共通点として


  • 幾何学や抽象的な形が動く(または、音を"運動"で表現しようとした)
  • 物語らない映像(ノンナラティブ)
  • 音楽との調和
  • ツールによって表現の特徴が出る(フィルムのダイレクトペイント|C4DやAE)

が挙げられますが、これだけの共通項を考えるとMGの起源は絶対映画/抽象アニメーションと考えることが出来て、その元祖がフィッシンガーやリヒターといった作家になる、、と考えることも出来ます。そうなると、前回のエントリーでは「グラフィックデザインに動的要素を加えて画面を構成した映像表現で、その元祖はソール・バスではないか」という定義が揺らぐことにもなりますよね。


しかしMGという言葉が出来た1990年代、、つまりDTPと映像表現が融合した時代の視点から考えると、"グラフィックス"という言葉が"グラフィックデザイン"を指してる、、つまりMGはデザインの文脈の表現だったのでは?、という疑問もあります。というのも、ハンスにしろフィッシンガーにしろ、彼らは画家というバックボーンがあって、絵画に時間軸を与えたくて抽象アニメーションを作っていたのであり、1900年代の抽象アニメーションは絵画の文脈の表現と言えるかもしれません。


つまり、今日のMGが1900年代から始まった抽象映像の影響を受けている可能性は考えられるが、「絵画の文脈の抽象アニメーションを、幾何学が動いてる初めてのアニメーションだからMG(デザインの文脈の表現)の元祖は彼らだ」と言い切ってしまって良いのか、、と僕は思うのです。



しかし今後、MGに影響を与えたと考えられる文脈の表現に触れる機会があったとき、これらの定義も変わるかもしれません。例えば同じ動きとデザインの融合を試みた表現であれば中村勇吾氏をはじめとしたflash文化の影響を受けてモーショングラフィックスを制作した方や日本のアニメ文化から技法を派生させた方もいるかもしれません。


次のエントリーも一つの様式やジャンルに絞ってお話したいと思います。(いつまで続くかな。。。)