2013年3月21日木曜日

【ご報告】"転校生 - エンド・ロール"MV公開



ってなわけで転校生の楽曲『エンド・ロール』のMVを自然写真を研究していらっしゃる写真家の山本渉氏と一緒に作りました。

内容は昨年末に行われたREPUBLICの映像素材を中心にMVとして再構成したのですが、今回は楽曲の歌詞のフォントをすべてデザインして映画のタイトルバック風のMVに作り直すという方向性になりました。(VJネタを見たいかたはmetromoonのTumblrをチェック


上の画像をクリックすると拡大されたものが閲覧できます。

REPUBLICのVJネタと同様に、フレーズごとにヒラギノ明朝体をタイピングしてアウトライン化。その後、部首ごとなどに分解して造形は異なるけど同じ意味の言葉のタイポグラフィを作ります。

それによって、転校生のもつ歪さを含んだコミュニケーション感を表現できるんじゃないか、、というのが狙いです。


過去に作っていた映像はカットやテンポを重視してたけど、今回は静止した画で見せてく映像は滅多に作らないのでとても新鮮な思いで作れました。あと実写素材を提供してくれたwattyにも感謝!実写がなければ作れなかった笑

2013年3月18日月曜日

【新作】こうこう | koukou について(2)


『こうこう | koukou』

無意味な言葉の可視化を試みた抽象アニメーション+肉声による多重録音作品
『見たモノを描いたのではない。見ようとしたモノを描くのだ。』

監督: 大橋史
作曲: 羽深由理
ミキシング: 滝野ますみ
歌: ルシュカ
ドラム: 田中教順 (from DCPRG)
---
五十音節gif animation
koukougif.tumblr.com/




というわけで最新作『こうこう | koukou』の解説後編です。後半は音楽や映像の演出について込み入った説明をしていきます。


ーーー

・音楽について
カメラを意識させない映像演出でいうと前作CHANNELERにも共通している部分だけど、CHANNELERとこうこうの映像の構造や展開も対局にある作風にしたいという意識が制作を進めながら、その意志が強くなったと思う。

前者はジェンガみたいな、シンプルなルールの上で一つの構造を積み立てていく様がスリリングになるように作っている。後者はドミノ倒しみたいに、ルールや構造よりもダイナミクスやアクロバティックさを重視している。


映像が縦に緊張感を与える構造なのか横なのか、、というおおまかな構造を根本的に違った作品にしたかったからだ。その結果、楽曲はプログレッシブロックのような変拍子と高い歌唱力が必要とされるメロディとリズムセッションの嵐となった。



羽深由理と滝野ますみと三人で楽曲についての方向性を話した際にオーダーとして「上原ひろみのようなプログレッシブジャズと歌ものが融合したような曲に映像を付けたい」というアプローチをシェアする。

ここで問題なのは、ジャンルをジャズにしてしまうと音楽を演奏するプレイヤーの個性に依存するジャンルのために、コンポーザーとしての力を発揮できないという理由で、結果的に「プログレッシブな楽曲」という方向性が残る結果に。



今回の音楽面で顔とも言えるヴォーカルについて話すと、元々、僕が過去の二作品が男性ヴォーカルたったので、今回は女性を起用したいと意見した結果、歌唱力と表現の幅の広さからニコニコカルチャーで人気の高いルシュカに依頼する流れになった。

ルシュカはロック調の力強いボーイッシュな歌声からオペラのような神々しいファルセットまで使いこなす七色いんこのような歌手で、今回の声や言葉が重要な作品においてハマり役と言える。

声を主役にした楽曲なので、バックを支える音の要素は出来るだけシンプルにしたい。最初の希望は「声・ドラムセット・金属音の楽器・電子音」という肉声に対して自然物では出せない音である金属音と電子音を組み合わせて対比効果が生まれると思い起用。

実際、ヴォーカルのルシュカが女性のため、高音に偏ると音楽に深みを出しにくくなるという理由で先に挙げた音にウッドベースを追加することに。

音楽面で最低限必要なメンバーが揃ったところでリリックをどうするかを決めていった。

無意味な言葉の歌をどうやって作っていくかが難題でした。進化論とか宇宙の誕生など既存のプロットがあれば作り易いけど、無意味でありながらクラシックのような時間軸の起伏が作れる言葉の歌を考えていくにはどうすれば良いか。

そこで、あらかじめ音楽と映像のダイナミクスをはじめに決めて、それにハマりそうな音節の組み合わせを考えていくことで、リリックが自然と決まっていく。

リリックは大きく分けて7つのフェーズで構成されており
1.イントロ 
2.点と線 
3.移動 
4.空間
5.言葉にならない言葉 
6.ドラマチック
7.アウトロ
というようなテーマが設けられている。


1.イントロ
楽曲の導入を花火を打ち上げたようなインパクトのあるシーケンスにしたく濁音を中心にした音節の繰り返しで構成している。

2.点と線
パ行とラ行と中心に構成。破裂と曲線的な運動が交差して空間に音が点在するイメージで構成。

3.移動
音が空間を移動していくイメージ。母音を引き延ばした歌詞の構成

4.空間
子音+母音(あ)で広がりのある歌詞に。後半はハ行を中心にエネルギーが広がるイメージで。

5.言葉にならない言葉
っっ曖昧な音節ハッキリした音節。言葉が段階的に変容していくイメージ。

6.ドラマチック
「っ」である促音を組み合わせて抑揚のある歌詞。メロディと相まってドラマチックな構成に。

7.アウトロ
イントロ同様に濁音の多い音節の構成。


1.イントロ
ば た ぱ だ  ば た ぱ だ  ば た ぱ だ
ば た ぱ だ
ば た ぱ だ    わわわわわわわわわ 
つゎとぅてぃてぃ つゎとぅてぃてぃ
しゅゎん ぐゎん  
るーーー


2.点と線
ぱ ら ぴ り ぷ る ぺ ら ぽろりん ほろろん
ぱ ら ぴ り ぷ る ぺ ら ぽっきん もっきん
ぱ ら ぴ り ぷ る ぺ ら ぽるりん ほるろん
ぱ ら ぴ り ぷ る ぺ ら ぽっけん もっけん (はーーー) 


ぱら  ぴり  ぷる  ぺら どこん どこん
ぱら  ぴり  ぷる  ぺら ぽこぬ ぴかむ
ぱら  ぴり  ぷる  ぺら にむのめものぬ
ぱら  ぴり  ぷる  ぺら ぞっけん ぽっけん
ぱら  ぴり  ぷる  ぺら ごっこん ぱっぽん
ぱら  ぴり  ぷる  ぺら ごっこん ぱっぽん
※ 

*~※ 繰り返し
び び び  ぎ ぎ ぎ       


3.移動
つぃー  すぃー 
とぅー  でゅー
つぃー  すぃー  とぅー でゅー ぴぉー げぁー
つぃー  すぃー  とぅー でゅー ぴぉー げぁー
つぃー  すぃー  とぅー でゅー ぴぉー げぁー
つぃー  すぃー  とぅー でゅー ぴぉー げぁー
つぃー  すぃー  とぅー でゅー ぴぉー げぁー



4.空間
(ささやき声で)
しゅるじゅるとぅるぬるあじゃぱー うにゃまー 
ほしゅふぃすょ にゃむぶしゅぇ みゃぷくぅ うにゃまうにゃま…
ゃにゃぴゃしゃか
わーーーーーーーーーーわーわーわー
ままままーーまー
ふぁふぁふぁふぁふぁーーー
はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ほゃ をも いしけは にほた あお ねのゆむめ みまゐる さしせとつと)
りぇりぇりぇれれれれれれれれれれれれれれれれれれれ


5.言葉にならない言葉
っっ すぉすぉ  そそ 
っっ ぐぉぐぉ  ごご 
っっ ぬぉぬぉ  のの っっ ぷぉぷぉ  ぽぽ 
っっ すぉすぉ  そそ 
っっ ぐぉぐぉ  ごご 
っっ ぬぉぬぉ  のの っっ ぷぉぷぉ  ぽぽ 
っっ すぉすぉ  そそ 
っっ ぐぉぐぉ  ごご 
っっ ぬぉぬぉ  のの っっ ぷぉぷぉ  ぽぽ 
ず! ひゅーーー てててててて いー あーーー
おおおおおおおおおおおおおおお




6.ドラマチック
おっこそっとの ねてぺてけ
うっくんつっくぬ ひゃにゃぴゃしゃか
あーか さたーな もごもぞこ
うっくんつっくぬ ひゃにゃぴゃしゃか


いっきしっちに ねてぺてけ
くっつんぷっつる ひゃにゃぴゃしゃか
はーま やらーわ びりぴりき
くっつんぷっつる ひゃにゃぴゃしゃか


☆~★ 繰り返し


7.アウトロ
で で で
ぷ ぷ ぷ
む ず ぐ ゆ む
りーじぴ  ぎーーぢび
ぱらやん がわざん
だばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだばだば

いーあーなーぶーまぁーーー
いあばゐ
いうすた

詞を元に羽深さんと僕とでデモ音源と絵コンテの投げ合いから最終的な音源が決まり、歌を乗せ終わったらドラマーの田中教順さんのドラム録音、そして僕もコンポジットが始まった。

結果的に、展開の変化が激しい音楽になった分、カメラワークを使わずに展開を考えるのは至難の技であったが、後半を具象性のある展開にしたことで、印象的な映像の流れが出来たと思っている。




・網膜の内側の世界
今回は音をイメージした世界、、つまり人間の網膜(レンズ)の内側で起こっている出来事というのを意識してる。普段僕らが目にしてる映像の多くは、映画やドラマなどの誰かの視点や第三者の視点、つまり網膜の外側の世界がほとんどだと思う。

『こうこう』のキャッチコピーである

『見たモノを描いたのではない。見ようとしたモノを描くのだ。』

は、現実にある風景やイメージを書き起こすのではなく、見ようと思ったものを描きたいという意志を現した言葉です。つまり網膜の外を表現するのではなく、内側の世界を描く必要があるということだ。

このコピーを考えたときに被写体深度やカメラアイを感じさせるような演出、消失点のあるパースペクティブが必要か否かを考えたときに、演出的に派手にはなるが自分の作品制作の動機になった美学に反すると思い、上記の演出方法を使わない方針を固めた。

しかし分かり易い空間表現を排除したことで、映像の迫力をどう出すべきか、作りながらとても悩んだ。そのときに同じカメラを用いず映像を作る方法のダイレクトペイントで作品を作っているノーマン・マクラレンの作品を見直してヒントを得ようとしてみた。





マクラレンの『線と色彩の即興詩』という作品は、コマに何も描かない黒い画面しか映らないシーンや、作画されたコマの間に黒いコマを組み合わせて差分効果によって描かいてないコマに動きを補完させ「コマとコマの間に何がおこっているか」を考えさせる演出を多用している。

この作品の面白いところはカメラレスの世界のためパースペクティブの存在しないのにも関わらず、黒い空間が狭く感じたり広大に感じたりと、シーンによって空間認識に変化を感じさせる所だ。つまりパースを描かずに無限の空間を表現できている事に驚くべきところなんじゃないだろうか。


こうこうの作風がマクラレンに似てるのは、そういった背景があるかもれいない。




・CGの有限性・限界線
『こうこう』の制作プロセスはすべてAfterEffects(以下AE)という映像加工ソフトで完結するように作られている。

本来はカメラで撮影された実写映像や手書きのアニメーションの画像などの「素材」と呼ばれるものを加工するための「道具」だが、僕はこのソフトを「素材」として解釈して作っている。

しかしCGアニメーションという言葉を聞くと、アバターやトランスフォーマーといったフォトリアルなVFXを想像しがちだ。

考えてみれば戦時中に使われたソナーなどのフィードバックをビジュアライズするためのアナログコンピューターから今日のハリウッド映画のCG表現も、画像のリッチさの進化に違いはあれど、本質である「現実を再現する」ということに変わりはない。

だが、僕はCGの本質は、そういった何かの再現のためのツールとして解釈していなくて、今では当たり前となった「カメラレスの世界」を表現できる方法なんじゃないかと考えてる。言い方を変えるとレンズを通さなくても光を描けるのがCGの魅力である。

まずカメラを感じる世界とはどういうことを指すのか。それは任意の視点と、そこから知覚できる空間感(消失点のあるパースペクティブや被写界深度など)を把握できることだ。



幸運にも、そのようなCGを使った方法論と、先に話した「網膜の内側の世界」にはカメラを用いない映像表現と相性が良いと核心した。

先に紹介したダイレクトペイントという手法は、レンズを用いないで映像が作れるという点において現代のCG表現に精通すると考えた。しかもダイレクトペイントとは違ってフィルムや塗料を用いず物質性を排除し、純粋に光を画面に描けるという事を考えると、CGを現代のダイレクトペイントにアップデートできるんじゃないかと考えるまでに至った。

つまり、CGを使えばより純度の高い状態で音楽を聴いて目蓋を閉じたときにイメージしたビジョンを表現できると考えた。

色彩も「網膜にイメージが焼き付いた雰囲気」「画面に直接光を描いてるイメージ」を再現するために、アニメーションを起こしたオブジェクトをそれぞれシアン、マゼンタ、イエローの三色用意して、三つのレイヤーを加算して白い色を作っている。

その中でシアンを1フレーム遅れて動くようにすることで、先に挙げたルックのイメージを作り上げた。

この光の表現こそ、皎々と輝く様が今回の作品のタイトルの由来にもなっている。


ーーー

最新作『こうこう | koukou』の解説は以上です。

長々と書いてしまいましたが、直感的に楽しめる作品にしたつもりですが、改めてテキストに作品の背景を説明することで、作品の見方が少しでも変わって見えても面白いかな、と思いました。

当分、大作志向の作品を作る時間をとるのは難しいですが、またこうこうの続編的な立ち位置の作品を発表出来れば良いな、と思っています。

【新作】こうこう | koukou について(1)

『こうこう | koukou』

無意味な言葉の可視化を試みた抽象アニメーション+肉声による多重録音作品

『見たモノを描いたのではない。見ようとしたモノを描くのだ。』
監督: 大橋史
作曲: 羽深由理
ミキシング: 滝野ますみ
歌: ルシュカ
ドラム: 田中教順 (from DCPRG)

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五十音節gif animation
koukougif.tumblr.com/



というわけで、無意味な言葉の音節の可視化を試みた抽象アニメーション『こうこう | koukou』をwebに公開しました!

今回は「無意味な言葉(音節)の可視化」をテーマにしたノンナラティブ(物語ない)作品になっていて、ニコニコ動画カルチャーで人気のシンガー、ルシュカの肉声をフューチャーした楽曲とシンクロしたアニメーションになっております。

恒例の作品解説ですが、今回は前半と後半に分けて書きました。全編では作品を作るキッカケとなった「無意味な言葉」と「音節の可視化」について僕なりの考えを記載しています。


・無意味な言葉とはなにか
もともと、2年前に作ったanimatope、僕の修了制作CHANNELERの続編的な立ち位置であり、3作品の共通テーマとして言葉を選んでいて、言葉の魅力とか面白さ、不気味さとかをどうすれば表現できるかを考えていた。

animatopeは「オノマトペに命を吹き込む」CHANNELERは「言葉の変容に翻弄される物語」こうこうは「無意味な言葉(音節)の可視化」と着眼点がそれぞれ違うようになってます。

こうこうは、前作CHANNELERの反動というか、自己否定するような作品で、文脈とか受け手の理性に依存しない作品を作りたい、、という所からスタートしてる。美術的な文脈は意識はしてるけど、そこを理解しなくても楽しめる作品を目指しました。

つまり直感的に楽しめるジェットコースターのような作品にしたかったわけだけど、そうなってくると深みのあるストーリーやプロットがどうしても蛇足に感じてしまい、それが「無意味な言葉」を使った音楽、そして「音節」に興味が向かってきた原因だと思う。

本格的な制作のまえに、言葉とは何か?ということを音楽制作チームと共同でリサーチしていました。このリサーチは前作CHANNELERでの経験を引き継いだかたちをとっていて、発見したことを箇条書きすると、、


  • 1音節でも意味は存在する(『す』は直線的な運動を現す言葉)
  • 音節が増すごとに意味が具体的になる
  • 音節には様々な運動がある(さ行は摩擦音、ぱ行は破裂音など)
  • 親を意味する言語にアの母音が多いのは、仰向けで喋ろうとする身振りの言葉
  • 無意味な言葉→身振りの言葉
  • 成長の過程で知性を得て文体のバリエーションが増える


と、日本語において、このようなことが分かってきました。

そのなかで興味を持ったのが「1音節でも意味は存在する」という点です。こうこうは、無意味な言葉の歌詞を歌にしています。でも、リサーチで1音節でも意味は発生するのに無意味な言葉の歌詞は作れるのだろうか?という疑問でした。



そんなとき、元永定正の本「ちんろろきしし」を読み直していた時、絵と一緒に載っている短い詩のような文章に、まったく意味を見いだせそうになかったのが、面白い体験として印象に残っていた。

なぜ意味が見いだせなかったのか考えてみると、言葉の音節の数や組み合わせに原因があると分かった。1音節というミクロの状態で言葉を観ると、単純な運動を現すオノマトペのように見えてきますが、2つ以上の音節が組み合わせをマクロな視点で見ると、次第で意味が見いだせなくなる。

意味が見いだせないというより、具体的な情報が抽出された言葉ではなく、人間の口から発する音がダンスのような運動に純化していくように思える。

つまり、無意味な言葉とは幼少時代に親にコミュニケーションを計る言葉と同じ身振りの言葉だと考えた。

そして、人間の生の歌声のもつ肉々しい音の性質を、アニメーションというコマを積み重ねる表現でなら魅力的な形で可視化できるんじゃないか、と当時の僕は考えていた。



・音節の可視化
音が可視化するということは、具体的にどのような事をすれば良いだろうか。そもそも音は空気の振動であって、それが鼓膜を伝って聴こえてくる物理現象なので、当然ながら目には見えない。

昔、学生だったころ、絵本サークルに所属していたときに、サークルOBだった方に普段作っているアニメーションを観ていただく機会があった。そのとき僕が作っていたアニメーションは、音楽で使われているブラスやパーカッションが台所で料理をしているときの具体音のように見える作品を作っていた。


その作品が上に張ったLet's Cookin' Jamという学部二年のときに作ったアニメーション。

その作品を見たOBの人が

「キミの作品は音の輪郭をなぞってるだけだね。音の内側を描かないと」

という言葉がすごく記憶にのこっていた。話の意味は理屈で理解できなかったんだけど、直感的に自分に足りなかったものが分かって、体中にエレキが走った。

昔の作品は、楽器音を日常の動作に置き換えたメタファーを使っていたが、その表現方法があまりに説明的だったと理解でき、その言葉がキッカケで音を具体的な様子の動作に置き換えたメタファーを使わず、抽象アニメーションの文脈に興味に向かわせた。

そして音の内側を描くというのは、音を形とか具象性のあるイメージに置き換えることよりも、運動で表現するほうがより純度の高い状態じゃないかと考える様になった。

音を運動で表現するとはどのようにすれば良いか。

音の運動や形を表現するのに、そもそも目には見えないので正しい方法は存在しない。だけど、作品にする以上、音を可視化したときに感覚的にならず、ある程度ルールとか理論を確立した方が良いと考えた。

なぜなら音楽にはピタゴラス音律や平均率といったパターン認識によって音階が作られているし、言葉の基になる音節も母音と子音の組み合わせによって成り立っている。音の可視化をテーマに作品を作るなら映像にも、ルールが必要だ。

そこで、オスカー・フィッシンガーのSTUDYシリーズを思い出してみる。






ストリングスを多用した楽曲と、鋭い線描の運動の同期が気持ち良いのと同時に、バイオリンなどの弦楽器が弦を摩擦する運動と、フィッシンガーの抽象的な形の運動が似ているように思えた。

そのとき、音を見える形に表現するには、音がどのような状態で発生する仕組みを理解して、その振る舞いを運動で表現すれば良い。





上のgifアニメは日本語の50音節をアニメーションにした表です。はじめは1音節ごとバラバラのgifデータをTumblrに公開してたら、ココのサイトの方がいい感じにまとめていただけました(ありがとうございます!)

人間の声は、楽器と大きくことなる点を言えば音色の数が豊富であったり、人によって声色が違うという点だ。

例えばバイオリンであれば、弓で弾いた摩擦音や弦を引っ張った音の二種類しか出せないのに対して、日本語は5種類の母音×9種類の子音の組み合わせによる音色の音が出せる。

この母音と子音の組み合わせをどのように可視化するか、というところから制作をスタートしていった。口や下の動きや空気の出方を参考にして、それを抽象的な運動にしてイメージを絞り出すように作っていった。


a…満遍なく運動が広がる
i…上下から平均した力が加わり押し潰れる
u…運動が真ん中に集まる
e…上昇感
o…上下に運動が広がる


k…角張った運動
s…素早く直線的な運動
t…跳ねるような緩急の強い運動
n…緩急のない滑らかな運動
h…面性を感じさせる広がりのある運動
m…分裂する運動
y…母音のiのようなつぶれたアクションから広がりのある運動にシフトする
r…曲線的な運動 
w…輪っかが出来る運動



先にも書いた様に、このルールを決めた基準は唇や舌の運動から由来しており、例えばs行の音の多くは弦楽器のような摩擦音の一種である。摩擦という運動から運動のスピード感を強調するために直線的で細いオブジェクトでアニメーションを付けることにした。

しかし、これらに従って原理的にビデオを作ったとしても映像の構成として魅力的にあるとは限らない。1音節ごとにパターンを読み取ってはフレーズという音の流れを区切る要素がなくなってしまいタイムラインが散漫な印象を受けてしまう。

そこで、歌詞の構成によって、音節の数をいっぺんに読み解いてビジュアライズするかパターン認識に変化を与えて作ることにした。

例えばビデオの「ぱ ら ぴ り ぷ る ぺ ら」と、音が空間に点在するシーンを、最初は一音節ごとに運動を読み解いたが、ドラムとシンセサイザーが加わって曲が少し盛り上がったところで歌詞を二音節ごとに認識してアニメーションに起こした。(「ぱら ぴり ぷる ぺら」という感じ)

それによって、音節同士のつながりによって面白い形や運動を探って同じ歌詞でもアニメーションに変化を与えることが出来ると考えた。





ーーー
『こうこう』について、全編は以上です。
後半は歌詞や音楽、映像の込み入った演出について触れていこうと思います。


2013年3月1日金曜日

【レポート】気になったもの - Feb.2013

というわけで2月に見てきた映像作品の中で、気になったものをピックアップ。
1月に比べるとマッチョな大作思考の作品はあんまり見受けられなかったけど、作り手の視点が細かい所に神経を注いでるのを作品から感じ取れるモノが多かったのが印象的(雑な感想。。。)




HAM THE ASTROCHIMP from Eno Swinnen on Vimeo.



YAMASUKI YAMAZAKI やますき、やまざき from shishi yamazaki on Vimeo.



Love is in the Air from Wriggles & Robins on Vimeo.





YouTube from ucnv on Vimeo.




Surface detail from subBlue on Vimeo.



HUNGER from National Film Board of Canada on Vimeo.



New York: Night and Day from Philip Stockton on Vimeo.




Jamie Lidell - You Naked (taken from self-titled album 'Jamie Lidell' out Feb 18/19) from Warp Records on Vimeo.



bird shit from caleb wood on Vimeo.





Shilo - Premiere Global Services "Paper Airplanes" from BERNSTEIN & ANDRIULLI on Vimeo.