2010年7月8日木曜日

Notation of Rotating Earth (1)

今回のテーマは僕が多摩美の学部時代に卒業制作として発表した映像インスタレーション作品「Notation of Rotating Earth」を紹介します。実はこの作品は7/14にNHKのデジスタという30分弱の番組に紹介されるようです。ただ、とても短い時間で僕の作品を紹介すると、どうしても表層的なところ(手法や簡単にアイディアの元を話すぐらい)しかクローズアップされず誤解が生じるものがあると思い、ココで詳細を書こうと思います。




この作品を制作したキッカケなんですが、もともと僕はミシャル・ゴンドリーや辻川幸一郎といった映像と音楽がシンクしたMVを作るのが好きで、それがこうじて「視覚と聴覚の関係性」をテーマに掲げてオリジナル作品を発表するようになりました。学部三年の時までは「音楽から映像を考える」事を軸に制作したんですが、卒制は逆に「映像から音楽」を考える作品を作りたいと思いつき、その時に最初に発想したアイディアが「楽譜」だったのです。そして楽譜をテーマに色々な資料を漁っていくにつれ、現代音楽や図形楽譜といった文脈を知りました。



作品のテーマなんですが、上記に書いた通り「画像から音楽を作曲し、新しい音楽を創造する試みの映像作品」。例えば五線譜というのはクラシック音楽をピアノによって作曲し、それを記録するための楽譜です。ですが図形楽譜というのは、そういった古典的な作曲法から脱却し新しい音楽を創造するための手段として発明されたものなんです。




例えば上の画像の武満徹と杉浦康平の「コロナ」などはバイオリンで演奏するために作られた図形楽譜です。バイオリンなどの弦楽器はピアノと違ってピッチを自在に変える事が出来る、つまり12音階の枠にとらわれずに音が出せますよね。なので記譜も有機的なインクの滲みで表現し、バイオリン本来の特性を活かせるような楽譜を創造したと言えます。



僕の作品の記譜方ですが、都市の光を音符として考えて曲をおこします。音楽というのはリズムがあって成立するものだと僕は考えています。そのリズムを俯瞰して考えると、それは24時間(一日)のサイクル、それを俯瞰すると一週間、またさらに俯瞰すると一年、、、つまり地球や太陽といった天体の生むリズムによって僕らの秩序(リズム)のある生活は作られている。それを考えた時に天体の運動によって作られるリズムで音楽が出来たら面白いんじゃないかと考えるようになりました。そして時間帯によって変化するもので音楽を感じさせるものを想像したときに都市の光なら一日のサイクルの中で変化もあり、ロケーションによっていろんな音楽が出来ると思い、都市の光で楽譜を作ろうと決心しました。

ですがカメラに映ったヒカリなら何でも良いのかというと、ちゃんと音符として捉えるものとそうでないものを選別するようにしてます。

これは360°撮影したパノラマをデジタル加工して丸い形にしてます。この写真の中心に等間隔に放射線を引いて、その線に当たったものだけをトレースします。

上記の画像はそのトレースした光だけを抽出したものです。形によってどんな音を発するかを僕自身が決めて作曲します。

音程の指定ですが、地平線に接触する光を「ラ」の音をして、それを基準に五線譜同様に光の高低によって音楽が演奏者の任意によって決定します。なぜ「ラ」の音かというと音楽のコードでラをAと呼びますよね。12音階の一番最初をラと考えクラシックのコンサートでピッチを合わせる時もこのラの音を基準に考えるので、地平線に近い音はラにしようと決めました。また音符の形によって、演奏する楽器や強さも変わっていきます。



というわけで、作品の概要的な事はこのへんにしておき、次のエントリーではテクニカルな話が出来ればなぁと思っています。

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