ご無沙汰してます。
2012年もあと2週間ほどになりました。
blogを更新してない間にもREPUBLICやら学生CGやらライブ映像の制作で色々忙しかったのですが、ちょっと時間が出来たので今年見た映像作品を振り返って、印象的だったものをピックアップしようと思います。というのも、改めて映像作品とかMVとかって、一年間だけでもかなりの量が生産されつつも、ボーっとしてると好きだったものも新しい刺激を求めて自分のなかで消費してしまいそうになる。それがちょっと怖いと思ったので、その年に興味深かったものを自分で一度整理してアーカイブしたいと強く思いました。最初、候補に上げてた段階では15作品ぐらいあったんですが、特に自分が推したい作品を厳選して以下の通りになりました。
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田我流 - 『やべ〜勢いですげー盛り上がる』
dir. スタジオ石(MMM)
今年見たビデオを振り返る際に、優劣は付けないが一番最初に紹介したいと思ったのがコレ。理由は僕が2012年で多分一番リピート再生したMVだからだ。下手したら身内ネタで終わってしまいそうな企画を、膨大なカット量とテンポの良いエディット、ちょいちょい効果的に挟んだ特殊効果など、確かな技術を持ったうえでギャグに走るところが好感が持てる。何より良いと思ったのが、このビデオのディレクターが田我流と共に歌ったstillichimiyaに所属してるメンバーで作られたことが、ミュージシャンを取り巻く環境の中でも完成度の高いプロモーションが作れることが、とても魅力的に感じたし、『そういう時代なんだなー』、というのが汲み取れる良いMVだと思った。
hello world と パフォーマンス映像
Dir. 勅使河原 一雅
マクラーレンのダイレクトペイントを彷彿させる有機的な表情をもったアブストラクトだが、これがジェネレイティブな映像であり、すべてリアルタイムで生成されることでピアニストとのライブパフォーマンスと見事に融合してる。勅使河原さんの作品やパフォーマンスは今年はVJやインスタレーションなど色んな形で見る機会があったけど、実際にスクリーニングされた状態で見ると、まるで目蓋を閉じて網膜の内側で音のイメージを描いてるかのようなだった。暗闇の中で描かれる色彩と運動は、アブストラクトシネマをアップデートさせる事に成功してると言えると、見ていて痛感した作品。
Hilary Hahn and Hauschka - Draw a Map
Dir. Eric Epstein
人間の知覚(視覚、嗅覚、触覚)による体験を、他者に移植することを試みようとするプロット。Hilary Hahn と Hauschkaのプリペアドピアノとストリングスが絡み合った芳醇な楽曲と、知覚による体験の移植というモチーフとの相性が素晴らしい。映像の前半までどういう時代設定なのか一見分かりにくいのも空想科学的世界観にも見えてるのが興味をそそられる。特に冒頭に出てくる知覚を波形のように可視化したデバイスの造形は、何とも魅力的。それ故に、被験者をロケバスみたいな安っぽい車で連れてったり、また同じく被験者が付けているマスクやヘッドフォンも、どこかチープに見えたりと小道具にまで気を使ってもらいたかった。
QQQ
Dir. そんよんそん
今年の三月に馬車道の芸大校舎で行われたアニメーション専攻の修了展で初めて拝見したんだけど、抽象アニメーションなのにも関わらず、作者の作品世界を構築するためのルール作りがまったく読めない複雑(難解?)な世界観(+異様に厚塗りされたパステルによる作画のインパクト)に圧倒された。作者のそんよんそん氏いわく、『新しい生命を作りたかった』という言葉が印象的で、確かに抽象アニメーションにある"既存の生命のデザインを抽象化する"ようなデザインがされてない、まさに『新しい生命』という言葉に説得力を持たせてるように思える。ただ思うのが、ライヒのミニマルミュージックのような既視感の強い音楽と、映像の強烈な画面作りと作者独自の文法の温度差が気になってしまった。。
休憩3D(アニメーション・ショー)
Dir. Don Hertzfeldt
2010年の『アニメーションズ・フェスティバル』で初めてドン・ハーツフェルトというアメリカの作家の存在を知ったが、今年開催されたハーツフェルトの作品でプログラムが組まれた上映で、『休憩3D』という作品を知る。込み入ったことは今年リリースされるDVDを買って自分の目で確かめてもらいたいんだけど、リンクを張った『休憩3D』は過去に制作された三部作(合計で40分近くある大作)の合間に流された、いわば『箸休め』のような作品なんだけど、3D映画をシニカルにレクチャーし、暴力性のある描写がとにかくバカバカしくて、イメージフォーラムで初めて見たときは爆笑してしまった。youtubeだと分かりにくいが、1コマずつフィルムで撮影されてて、見て行くうちに情報量がどんどんリッチに補完されてく感じが気持ちいい作品。
Custard
Dir. peter millard
日本でも『変態アニメーションナイト』でピーター・ミラードの作品を知った方も多いはず。今年の春頃にvimeoで偶然見かけたんだけど、どう作画してるの想像つかない異様なメタモルフォーゼと、脳の奥の奥にまで強烈に突き抜ける効果音。『なぜこのような作品を作ったのか』と考えてしまう。もし時間と空間を歪んだ状態があるとしたら、ピーターの描くアニメーションのような感じになるんじゃないだろうか。。あと登場人物がほとんど裸なのが気になる。
ハウス
Dir. デイヴィッド・ブオブ
『グレートラビットと世界のアニメーション傑作集』で初めて拝見。
トレーラーがQuickTimeというのがヒジョーに残念なのだが、、、箱庭的構造の世界が、重力の法則を無視して展開して主人公の娘が祖母の面倒を見るが、叔母と母親が邪魔をする、、、という結構ヤバいストーリー。上にも書いたけど、箱庭的な妙に圧迫感のある不気味な世界観と、叔母と母親に邪魔されながらも必死に祖母の面倒をみるために四苦八苦する姿はとてもキュート。何かしらの形で日本で再び上映されないかなー。
X - KXFS Canal Commission
Dir. Max Hattler
ラストは、僕が大好きな映像作家、マックス・ハットラーによるコミッション作品。
扇子状に広がる噴水に昔のビデオゲームにあったシューティングゲームを彷彿させる抽象アニメーションを投影されている。まるで空間に光を直接描いたように見える、、というより光が水という物体に憑依してモノとしての存在を得た姿はかなり神々しく見えて、グっとくるものがある。ちなみにこの映像で作られたアニメーション部分はmatt abbissによるもの。
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という感じ。振り返ってみるとネットで見た映像と上映会で見た作品が多かったですね。あとリストにピックアップしなかったけど、WOWの柴田さんが作った『SyncBody』の制作プロセスが音同期を全部コンピューターが自動でやってたりと、制作過程が興味深かったり、水江さんの『MODERN No.2』のラリー・キューバが現代に甦ったかのような劇アツ幾何学アニメーション、大島智子がディレクターで制作した泉まくらのMV『balloon』のもつ生々しさ、初音ミクを使った音楽のMV『tell you world』は、自分の中でのボーカロイドのもつ抵抗感をぬぐい去ってくれた強度の高い楽曲と映像の融合だったし、『ヱヴァQ』もかなり衝撃的でした。特にQに関しては多分今年最後に見た映画になるんだろうけど、序破急の『急』にあたるにふさわしい急展開ぶりに、ちょっと追いつけない要素は強かったり、映像のディテールが気になる箇所はありつつも、『劇場で何度も見たい』と思わせる完成度には頭が下がります。あと、今回は楽曲の完成度の異常な高さにはビックリ!!!多分年明けにもう一度見るし、サントラも多分買います。
リストに挙げてみると、自分は映像を取り巻くテクノロジーの進歩とかにあまり興味がないんだなぁ、というのが一番印象的でした。今年も抽象表現やアニメーションに強い関心がある一年で終わってしまいましたが、もし来年の今頃に一年間振り返って変化があるかも。。
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