2012年4月24日火曜日

【新作】CHANNELER公開 ープロット編


"CHANNELER" Staff

Director: OHASHI Takashi(takashiohashi.com/ )
Composer: HABUKA Yuri(yurihabuka.web.fc2.com/ )
Mixer: ISHIDA Taro(taroishida.com/ )
MC: ONIPARI
Support Staff
Sound engineer: MOTOKI Kazunari


そんなこんなで、3月に卒業した多摩美術大学院の修了制作として作っていた「言葉の変容」をテーマにしたビジュアル・ミュージック《CHANNELER》が昨日から公開になりました。

この前のエントリーでも作品の概要を書いたので重複してしまうのですが、SSTVのCANVAS1.0.0というステーションIDを作る企画のなかでオノマトペの可視化をテーマにした"Animatope"を考えた際に言葉や声の面白さをアニメーションで表現することに可能性を見いだしました。

そこで僕の修了制作も言葉をテーマにした作品を作りたくて、前回同様にコンポーザーに羽深由理、そして普段から敬愛してる音楽家:石田多朗を迎えて三人でコンセプトとプロットを練って行きました。今回のエントリーではより詳細に話を展開していこうと思います。


日本語の成り立ち
プロットを練る前にそもそも日本語における言葉って何だろうか?という疑問が湧いてきました。そこで日本語のルーツである大和言葉のリサーチをすることに。調べてみると、大和言葉から現代語に移り変わってゆくなかで、音節が増えるごとに意味が複雑になる傾向があることが分かりました。大和言葉は母音の変化を二度、三度と繰り返し行われて生成されたものが日本語の原理であると。



1音節語→2音節語→3音節語→4音節語
と音節が増えることで現代的な日本語に変化した。
(例:ス「スーっと動く」→刺す/サス)(:ヌ→ナグ→ナガル→ナガレル)

大和言葉の原始は1音節語であり、その意味は動作を示す擬態語だったと言われています。日本語とは単純な意味が派生して多くの意味を含んだ言葉が生まれるようになりました。(日本にオノマトペの表現が豊富なのも裏付けられる)

例えば「指す」「刺す」や「去る」は移動や動きに関連した言葉になります。どの言葉にも、「ススム」や「スク」などを語源とした「ス(サ行)」という言葉に辿り着く。突き詰めて考えると、どんな短い音素の組み合わせでも、言葉やイメージに関連付けさせることが出来てしまう。

つまり日本語は「単純な意味」という要素の組み合わせで構成されていることが分かる。そして言葉には構造や型も存在する。2音節は1+13音節は1+21+1+1などに言葉を分解する事ができ、12音を基本的な単位として構成していたことが分かりました。


3音節動詞
2+1
[動詞+動詞語尾]
ツク+フ→ツカフ(使う)

1+2
[1音節名詞+2音節動詞]
ソ(背)+ムク(向く)→ソムク(背く)

1+1+1
[1音節動詞+強調+動詞語尾]
クム(組む、組む入る)→クボム(窪む)
クル(暮る)→クダル(下る)

このように、声の持つ音響的な面白さや運動・質感を突き詰めると、日本語における言葉の表現に突き当たってゆく。制作当初は「声や言葉の純粋なビジュアライズ」をテーマにした抽象アニメーションを作る予定でした。しかし、リサーチを進めてゆく中で、人が言葉を覚えてゆく事とは何なんだろうか?といことに興味を持ち、結果的に私はその疑問をテーマに作品を作ることに。


うんこ(u,n,ko)の音節を組み合わせた抽象アニメーション


だっこ(da,kko)の音節を組み合わせた抽象アニメーション


なんで(na,n,de)の音節を組み合わせたアニメーション

言葉の本質
作品のリサーチをしてゆく中で、多摩美術大学の情報デザイン学科准教授の佐々木成明氏からこのような話を伺った。


「ママや母親など、親を示す言葉は母音が"あ"で構成された言葉が多い。それは赤ん坊が仰向けで親とコミュニケーションをはかる時、母音が”あ”言えない身振りから生まれた言葉である事がわかる」


そこで改めて気付いたのは、言葉には「必ずしも意味が含まれない」という事です。先に挙げた「ママ、パパ」は親と話したいという本能から生まれた意味のない言葉になりますが、成長の過程で得られる丁寧語やスラングは、環境や特定のコミュニティーで他者と関わるための知性が介入された言葉ではないだろうか、と。ネット弁慶や本音と建前など、人は他者と関わるために形をかえてコミュニケーションをしようとしますが、その振る舞い方に私は「言葉は知性に取り憑かれ形容を変え、そして人間もその言葉に取り憑かれて姿を変えてる」と考えるようになったのです。

そこで私は言葉のもつ危険な側面をビジュアルミュージックにしてあぶり出す事は出来ないかと考えた。それがCHANNELERを制作しようと思った目的です。


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