(1980年代のMTVでは、連日MJのスリラーがオンエアされてたらしい)
1980年代にMTVが誕生。そして1990年代にadobe After Effectsがリリースされると同時に、日本ではグラフィックデザイナーのナガオカケンメイ氏と映像作家の菱川勢一氏がドローイング&マニュアルという会社を設立し、当時コマーシャル映像で企業のロゴを動かす『フライングロゴ』と呼ばれるデザインを制作していました。日本のMGの草分け的存在と言われています。当時の時代ではデザインと映像が分離された職業だったらしく、その二つを同居するような名称として『モーショングラフィックス』という言葉を考えたそうです。(おそらくMGという言葉が出来て定着したのが、この1990年代だと考えられます)
Motion Graphics 2000 開催記念企画 : 第1弾
interview with ナガオカ ケンメイ/ドローイングアンドマニュアル
http://www.adobe.com/jp/motion/columns/nagaoka/vol1.html
そして、ここ数年(youtubeが広く認知されはじめた2000年代)のデスクトップ環境の低価格化によって学生でもアイディアとしつこく作り込むことにいってハイクオリティな映像が作れる様になり、現在ではその映像をニコニコ動画やvimeoなどの動画配信サービス上で大量にアップロードされています。その中で手法(After Effectsのプロジェクトファイル等)をシェアしたり同業者が技法の見よう見マネなどをすることによって、動画サイトによってモーショングラフィックスの方法論や評価軸の深化が起きてると考えてます。
例えばニコニコ動画のボーカロイドを使った楽曲のMVでは歌詞の認知性を高めるためのモーションタイポグラフィを使ったアプローチが生まれ、それがここ数年日本のメジャーミュージシャンのMVにも影響を及ぼしている。
サカナクション/アルクアラウンド
クチロロ - あたらしいたましい
vimeoの場合、After Effects(以下AE)というデスクトップ上で映像の合成/加工やアニメーションを作ることが出来るツールを駆使した動的要素が加わったインフォグラフィックス、AEやCinema4D(MG制作に適応性の高い3DCGソフトウェア)を多用したミュージックビデオや企業IDなどが高い人気を誇っている。特にAEはCS3.0以降、外部ソフトを使わなくても直接パスデータを描画しキーフレームをタイムライン上に打つことでアニメーションが作れるシェイプレイヤーが使えることになり、AEを使ったMGの人気は加速することになる。
Japan - The Strange Country (Japanese ver.) from Kenichi on Vimeo.
他にもテクノロジーの側面で観れば、最近ではPerfumeのダンスデータを基に作られたCG映像やmasato tsutsui氏のようなmax jitterを駆使したジェネレイティブ(自動生成)なリアルタイムVJなど、MG表現は多様化し、そして定義が曖昧になっていきました。このようにテクノロジーの進歩やそれに伴って育まれた文化やコミュニティーによって発生した表現ジャンルなので、歴史的も浅く定義するのがまだ難しい分野だと思いますが、僕なりにMGの定義や歴史を話していければと思います。今回のエントリーでは映画のタイトルバックに絞ってお話します。
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A Brief History of Title Design from Ian Albinson on Vimeo.
リンクの動画は映画のタイトルバックの歴史を振り返った映像作品。動画の最初の方をご覧になると、静止したグラフィックがただ浮かび上がっていたのが、途中から幾何学的な図形とタイポグラフィが四角い画面に疎密を作って構成され動的な要素が加わった映像に変化したのが分かると思います。
The Man With The Golden Arm by Saul Bass
さきほどご紹介した動画で、静止画を埋め込んだだけの映像からグラフィックに動的要素が加わる境目を生んだのがソール・バス。氏は映画のタイトルバックにグラフィックデザインの概念(画面を構成する)と映像の特徴である動的要素を初めて融合させたグラフィックデザイナーで、後に映像作品も手がけるようになっていきました。今となっては映画のタイトルやクレジットにグラフィック的なアプローチを融合させたデザインは珍しくないのですが、1950年代の映画にとって、クレジットがグラフィックのような疎密でしっかり作られた画面構成は当初画期的といえました。グラフィックのような緻密に整理された画面に動的な要素が加わり、まさにMGという言葉にふさわしい。
最近の映画だと、X-MEN FIRSTCLASSのタイトルバックがソール・バスのような明快な疎密関係や画面構成をしているデザインでとても分かり易くて勉強になります。X-MENの劇中で描かれる「遺伝子の変化」を単純な幾何学図形だけで見事に表現されている、まさに目的と手段が的確でまさにMGのお手本のようなタイトルバック。。ホイットニー兄弟の作品のようなアナログCG感があって風合いも不思議ですね。
んで上記のタイトルバックの元ネタはおそらく『007 - DR.NO』
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と、ここまでの話の中でモーショングラフィックスをあえて定義していくと「グラフィックの概念(平面的な画面に文字や幾何学図形などを構成する)を取り入れ動的要素と融合させた映像表現」と定義でき、そして、その元祖がソール・バスであると言えます。しかし今後、他のMGの映像を触れることで、この定義もゆれることになると思います。冒頭のリンクにあった映画のタイトルバック集ですが、以下のURLで、ダイジェストではなく、フルバージョンで個々の映画のタイトルがご覧になれます。
面白い記事でした!
返信削除ただ、モーショングラフィックスの元祖がソール・バスという部分は違うと思います。
タイトルバックにモーションデザインを意図的に持ち込んだ立役者とか第一人者ならそうだと思いますが、歴史として元祖というなら、絶対映画、ハンス・リヒターやヴィキング・エッゲリング(1920年代)とかオスカー・フィッシンガーとかが先にあって、ノーマン・マクラレンやジョン・ホイットニーやソール・バスが出て来てるんじゃないでしょうか…。
コメントありがとうございます!
削除実は僕も上記の作家達の名前を挙げようか迷ったのですが、あえて「ソール・バスが元祖なのではないか?」と言い切ってみました。
なぜ言い切ったかというと、今後の記事の展開として、本文にも書いた通り、「今後、他のMGの映像を触れることで、この定義もゆれることになる」ということを今後の記事の展開として書き起こしたかったので、あえて現段階でソール・バスを元祖なのでは?と言い切りました。
今後はアニメーションや、CG映像など他の文脈からモーションデザインの分野に入り交じることで、誰か元祖でどういう定義なのかは変わっていく、、(というかよく分からなくなっていく)ということを追々お話しようと思ってました。
今後記事を書いて明快な答え(誰が元祖で定義が定まる)が出るか分からないですし、しゃべり場的な答えが出ずに悶々とした結末になるかもしれませんが、暖かい目で見守って頂けれると幸いです。