久しぶりの更新になりました。
昨年の9月から関わっていたプロジェクトSSTV CANVAS_1.0
SSTV CANVAS_1.0
今回のエントリーは主にIDのプロットを中心にお話ししたいと思います。
音楽チャンネルのIDというと、ロックやダンスミュージック、エレクトロニカといった音楽を扱ってるものが多いと思います。なので、音楽チャンネルっぽくないクラシックや声楽のような生音を活かしたモノを軸にしたIDを作りたいと思ったので人の声、、、オノマトペを使ったビジュアル・ミュージックを提案しようと考えました。
オノマトペをリサーチする際に、日本語の構造やルーツの存在が気になりました。そこで大和言葉に関して調べるとソレらはほとんど言葉の冒頭に濁音を扱 わない事が分かりました。例えば「ぬいぐるみを抱く」を大和言葉に置き換えると「ぬいぐるみをいだく」になります。他にも薔薇→イバラという言い方になります。ここで分かった事は当時の大和言葉には言葉の頭に濁音を扱うのは擬態語/擬音語だけだったようです。つまりオノマトペの特徴として、普通の言葉ではあまり使われない濁音を扱うことで「オノマトペを発する気持ち良さや楽しさ」があるんじゃないかと考えました。
言葉と図形の関係をテーマにした作品、、、特に同じオノマトペと視覚表現の関係性をテーマにした前例を探ると谷川俊太郎原作「もこ もこもこ(画像上)」や「かっきくけっこ」などが挙げられます。これらの絵本には親子が絵本を見ながら書かれている言葉を読むことで「言葉を発する楽しさや気持ち良さ」が良く表現されています。ビジュアルもシンプルなアブストラクトで言葉の持つ質感などを図形や色調の変化だけで表現されています。実際に僕のIDも谷川俊太郎の絵本にかなり影響を受けました。
もし、オノマトペを可視化したアニメーションを作るなら上記のような事をそのまま映像化しても意味がないと考えました。「アニメーションでやる必然性」を考えることが、今回のIDのキーになると思ったのです。アニメーションの語源でもある「アニマ=魂」をオノマトペに宿す新しい生命「アニマトペ」を作ろうと決めました。
余談ですが、ビデオが完成した後に観に行ったICCの企画展示の「みえないちから」で、学芸員の畠中実氏のテキストにこのような文章が書かれていました。 「オスカー・フィッシンガー(1900–67)は,「すべてのものに精霊が宿っている」と言い,その精霊を解き放つためには「そのものを響かせればよい」と 言いました.この言葉は,アニメーションの語源が「アニマ(生命を吹き込むこと)」であることを想起させるとも言えますが,それ以上に,あらゆる物質がその中にエネルギーを宿しているということをほのめかす言葉だと言えるでしょう.」 畠中さんのテキストに自分達がやりたかった事を明確に言葉にしていて感化されたのを覚えています。
本題に戻りますが、ビデオのルックは出来るだけ抽象的にしたかった。その理由は「どんな姿・形をしてようと、運動によって生命感は表せる」という事を感じてもらいたかったからです。これはアニメーションの面白さを絵画的なテクスチャー表現やグラフィック的なルックの格好良さで勝負しないで、動きでオノマトペの質感や生命感を表したかったからです。リンクの動画やキネティック・アートのテオ・ヤンセンなどを見れば分かるように、動物の姿を模倣してなくとも運動によって生き物っぽさは表現出来ることが分かります。そこで、劇中で使うオノマトペは「運動」を表すものに限定してチョイスして、それに合うような動きと形で言葉の生き物を表現しとうよ決めました。映像の演出も生命にちなんで、生命の循環や食物連鎖をイメージした映像の流れを考えて行きました。
曲も生命を連想させることをイメージして民族音楽、、、特にケチャから発展した曲にしようと決めました。ケチャの持つ心臓の鼓動のような同じ言葉を繰り返す感じが、オノマトペを音楽にのせるにはピッタリだと判断しました。
一見シンプルな曲に聴こえますが、実際には様々なリズムが重なっているそうです。シンガーの方は何度も「この曲難しい!」っておっしゃってました。
プロットのお話しはココまで。次は演出のお話とコラボレーションした作曲家さんとシンガーの方の紹介をしようと思います。
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