2010年9月19日日曜日

-Human Orchestra-



というわけで新作の発表です。
今年の夏(主に8月)まるまるかけて作ったアニメーション作品なんですが、僕の今年の研究テーマとして「2Dと3Dの切り替えと音響の対比」をさぐる目的として、やってみたいことを全部試した作品となってます。表現自体に少々まとまりに欠けますが、技術的には過去の自分の作品と比べれば結構突き詰めた感はあると思います。


物語としての主題ですが「相似」をテーマに扱ってます。いわゆる「姿形が似たものは本質的な意味も似ているのではないか?」という事ですね。これは、作品を作る動機として「ミクロとマクロを行き交うような映像を作りたい」と思って、イームズのパワーオブテンをヒントにアイディアを展開させました。


音源ですが、友人のサウンドアーティストの大西義人氏に依頼。彼とは卒業制作の展示で色々話す機会があって、それ以来の仲なんですが僕の劇的に変化する映像に見事にフィットする音楽を提供してくれました。

制作プロセスなんですが、普段なら完成された音源>曲のルールを探る>ビジュアルのアイディアを展開>コンポジットという、MVを作る時のようなプロセスなんですが、今回に限っては映像を先行させて作りました。というのも大西君とのスケジュールの関係や、互いにアイディアを展開させる時に映像がある程度の形になってからの方が作り易いと思ったからなんです。

しかし映像を先行させて音楽を作ってもらうことは初めてだったので、色々と大変でありました。映像自体が音源抜きにしても、ある種の音楽的な構成にしないといけないし、劇的な画面展開をすると音源全体のまとまり感を出すのが大変だったりと、一度完成させた後に何度かトライ&エラーを繰り返しました。

という、色んな思いが詰まった新作ですので、是非ご覧下さいませ!

2010年7月26日月曜日

Notation of Rotating Earth (2)

前回のエントリーからだいぶ日が経ってしましました(別に忙しかったわけじゃないけど。。。)


そういえば、ちょうど一週間前にNHK教育のデジスタで僕の作品「Notation of Rotating Earth」が紹介されて、番組をご覧になった方がツイッターにコメントが寄せられていてとても面白かったです。ご覧になっていただきありがとうございます!この作品は映像インスタレーションなので、地上波にあのような形で紹介されるのに結構不安を感じてたのですが、思った以上に反響があって素直に嬉しい限り(小栗旬にも感動を与えたしね!)




んで、今日はその作品のテクニカルな話でもしようと思います。
番組内でも作品の技術的な概要は説明されてましたが、あれだけでは色々と「面倒な処理の仕方」や「重要なポイント」は伝わりにくかったと思います。

まず最初にパノラマのくだりを説明すると、パノラマ写真の制作は三脚にカメラを乗せて複数撮影し、それをコンピューターでレタッチする、、、と言うとなんだか簡単に出来そうに聞こえてしまいます。でも実際は憶える事や必要な技術が多く、そう簡単に習得出来ません。


とりあえず必要なポイントを抑えると。。。

  • 雲台を乗せた三脚を水平に保つ(これが上手くいかないとパノラマのレタッチが結合しません
  • カメラを固定し撮影設定を「マニュアル(M)」にしてカメラの露出の設定を一定に保つ。
  • ホワイトバランスをオート以外に設定する(オートにすると撮影した角度によって色が変わってしまう
  • 広角レンズのフォーカスを無限円にする(フォーカスが一部の箇所になるとレタッチが結合しない)
  • 被写体がなるべく遠くにある所を撮影ポイントにする(広角レンズだと近くにある被写体が歪みやすい)

よりカメラの構造やパノラマに必要な技術を知りたいのであれば、このページが詳細かつ分かり易く説明しています。普段、カメラを使わない人はマニュアル設定や露出の仕組みにだいぶ戸惑うと思います。僕も最初はパノラマがこんなに難しいものだとは思ってはなかったのですが、練習を積み重ねればだいぶ楽に作れるようになります。ちなみに360°のパノラマを作るためには、等間隔に18枚以上撮影する必要があり、素材が少ないと結合が上手くいかないので、三脚と雲台の付け根に等間隔に目印になるようなシールを付けておくと、分かり易いです。


撮影が終わればそれをパノラマメーカーというソフトで結合。Photoshop CS4以降でも近い機能があるんだけど、コッチの方がキレイかつパフォーマンスが優れているので体験版(2週間だけ使いたい放題)を使用。レタッチの設定に360°パノラマ用のアイコンがあるので、それをポチっと押せばあとはコンピューターが勝手にレタッチしてくれます。



それをAfter Effectsに読み込ませて正方形のコンポジットに以下のように変形させる。

このコンポをさらに別のコンポに入れて極座標というフィルターで加工してゆきます。



上記のような設定にしたら。。。


ご覧の通り丸い形に変形しました。


それを16:9のコンポジットに入れます。

しかしこのままだと画面上部に黒いスキマが出来てしまうのでコレを馴染ませるために「新規レイヤー→平面」を作成し、それに「四色グラデーション」というエフェクトをかけます。



このフィルターは四つのアンカーポイントからそれぞれ指定した色がグラデーションがかかるようになっており、これを利用して画面に出た不自然な黒を消して写真の素材と馴染ませます。


ご覧の通り、黒がキレイに無くなり写真の素材と馴染みました。


シンプルなビジュアルですが、細かい修正が必要な作品だったためか簡単そうに作れるんじゃないかと僕も最初は思いながら作ってました(実際は結構面倒くさい。。。)同心円にパノラマを加工した作品は他にも色んなアプローチで使われている事が結構あるので、みなさんも色々漁ってみては如何でしょうか?


というわけで今回のエントリーはこのへんで。

2010年7月8日木曜日

Notation of Rotating Earth (1)

今回のテーマは僕が多摩美の学部時代に卒業制作として発表した映像インスタレーション作品「Notation of Rotating Earth」を紹介します。実はこの作品は7/14にNHKのデジスタという30分弱の番組に紹介されるようです。ただ、とても短い時間で僕の作品を紹介すると、どうしても表層的なところ(手法や簡単にアイディアの元を話すぐらい)しかクローズアップされず誤解が生じるものがあると思い、ココで詳細を書こうと思います。




この作品を制作したキッカケなんですが、もともと僕はミシャル・ゴンドリーや辻川幸一郎といった映像と音楽がシンクしたMVを作るのが好きで、それがこうじて「視覚と聴覚の関係性」をテーマに掲げてオリジナル作品を発表するようになりました。学部三年の時までは「音楽から映像を考える」事を軸に制作したんですが、卒制は逆に「映像から音楽」を考える作品を作りたいと思いつき、その時に最初に発想したアイディアが「楽譜」だったのです。そして楽譜をテーマに色々な資料を漁っていくにつれ、現代音楽や図形楽譜といった文脈を知りました。



作品のテーマなんですが、上記に書いた通り「画像から音楽を作曲し、新しい音楽を創造する試みの映像作品」。例えば五線譜というのはクラシック音楽をピアノによって作曲し、それを記録するための楽譜です。ですが図形楽譜というのは、そういった古典的な作曲法から脱却し新しい音楽を創造するための手段として発明されたものなんです。




例えば上の画像の武満徹と杉浦康平の「コロナ」などはバイオリンで演奏するために作られた図形楽譜です。バイオリンなどの弦楽器はピアノと違ってピッチを自在に変える事が出来る、つまり12音階の枠にとらわれずに音が出せますよね。なので記譜も有機的なインクの滲みで表現し、バイオリン本来の特性を活かせるような楽譜を創造したと言えます。



僕の作品の記譜方ですが、都市の光を音符として考えて曲をおこします。音楽というのはリズムがあって成立するものだと僕は考えています。そのリズムを俯瞰して考えると、それは24時間(一日)のサイクル、それを俯瞰すると一週間、またさらに俯瞰すると一年、、、つまり地球や太陽といった天体の生むリズムによって僕らの秩序(リズム)のある生活は作られている。それを考えた時に天体の運動によって作られるリズムで音楽が出来たら面白いんじゃないかと考えるようになりました。そして時間帯によって変化するもので音楽を感じさせるものを想像したときに都市の光なら一日のサイクルの中で変化もあり、ロケーションによっていろんな音楽が出来ると思い、都市の光で楽譜を作ろうと決心しました。

ですがカメラに映ったヒカリなら何でも良いのかというと、ちゃんと音符として捉えるものとそうでないものを選別するようにしてます。

これは360°撮影したパノラマをデジタル加工して丸い形にしてます。この写真の中心に等間隔に放射線を引いて、その線に当たったものだけをトレースします。

上記の画像はそのトレースした光だけを抽出したものです。形によってどんな音を発するかを僕自身が決めて作曲します。

音程の指定ですが、地平線に接触する光を「ラ」の音をして、それを基準に五線譜同様に光の高低によって音楽が演奏者の任意によって決定します。なぜ「ラ」の音かというと音楽のコードでラをAと呼びますよね。12音階の一番最初をラと考えクラシックのコンサートでピッチを合わせる時もこのラの音を基準に考えるので、地平線に近い音はラにしようと決めました。また音符の形によって、演奏する楽器や強さも変わっていきます。



というわけで、作品の概要的な事はこのへんにしておき、次のエントリーではテクニカルな話が出来ればなぁと思っています。