2014年3月12日水曜日

【新作】fhána - kotonoha breakdown



ってなわけで、iTunes注目アーティスト2014に抜擢され、最近では『有頂天家族』『ウィッチ・クラフトワーク』のタイアップ曲で話題のバンド"fhana"のMV『kotonoha breakdown』を監督しました。

ビデオの込み入った話をするまえに、この楽曲の説明をすると、kotonohaは2011年の3/11に起きた一連の震災や原発事故、それによって変わってしまったSNSのコミュニケーションの姿を描いている。

fhanaのリーダーである佐藤純一氏は、元々FLEETっていうバンドで活動してて、おれもその頃からの活動は知ってたけど、3/11直後に津田大介氏と一緒に活動するなかで、伝えたいことが届けたい人に伝わらず、不本意な受け取り方をされたりと、そのときの状況をネットで見ていたので、今回の楽曲が生まれた経緯を呑み込みやすかった。

MVのプロットを考えるときは、なるべく曲と映像のテーマは違った方が良いと考えていて、それは見る人が表現に対しての解釈に広がりが生まれるんじゃないかと思っている。しかし、今回おれは、佐藤さんが体験したtwitterでのコミュニケーションの摩擦や、それによってネットの切迫とした空気感を、映像で翻訳したいと考えた。

(上から下に流れるカメラワークの演出が多いのも、twitterやFacebookのようなSNSのタイムラインを意識してる。)

画面作りの話をすると、アジアの伝統色の配色パターンや写真作品の色合いを参考にしつつ、ベクターベースの画面作りに湿気を感じさせるようなフィルターエフェクトを加えている。

そこに、セカンドライフのようなアバターの世界に、pixivで見られる『可愛い人物キャラクターとジオメトリックな景色』をモチーフにしたイラストのイメージを組み合わせている。ちなみにキャラクターデザインは、fhanaの自主制作盤の特典マンガを描いたゆずさちゃんが担当。

そして、背景の都市がテキストにメタモルフォーゼするのも、人がタイピンクするコミュニケーションに没頭することで周りの景色が見えなくなる心理状態を表現した。

よくアニメの演出で、キャラクターの心情を抽象的なビジュアルの背景で表現することがあると思う。


こんな感じに。

一方で、心象表現のもつ野暮ったさも感じていて、自分なりにそれを解決したかった。そこで、背景の作り方を10 x 10pxのグリッドにスナップするようなデザインにして、タイポグラフィもグリッドにおさまる図案的な作りにすれば、『背景→文字』の変化が自然に繋がると考えた。


モーショングラフィックスで表現するのであれば、景色→心象風景の変化もデザインのトンマナを揃えれば自然なつながりになる。

ちなみに小ネタになるのだが、佐藤さんが登場するシーンで、背景の文字をよく見ると、佐藤さんがfhanaを始める前のバンド『FLEET』でエゴサーチしてる演出をしたのは、このMVが3.11の前〜その後の切迫としたネットの世界を表現してるからだ。

あまり直接的に震災や原発事故をカリカチュアに描いた作品には妙な近寄り難さをおれは感じてしまうので、なるべく、今回のMVは佐藤さんの体験を汲み取りつつも、もう少し広い解釈が出来るようにしてみたつもり。

他にも小ネタとか言いたいことはあるが、全部書くと長くなるので割愛。

特にオチはないが、ビデオがリリースして間もなくテンションが高いうちに、制作ノートを書いておく。。。

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加筆

fhanaのリーダーである佐藤純一さんのblogに、今回の楽曲に対する想いが書かれてるので、是非そちらも見てほしいです。

http://fhana.jp/blog/jsato/2014/03/11/